kemoxxxxxの日記

kemo cityからの脱出

フォーミュラカーの安全神話がまた崩れた

先日の9月1日F1第13戦ベルギーGPが開催された。

サーキットには魔物が棲んでいる。

FIA F2選手権決勝レース1が8月31日に行われ、予選13番グリッドからスタートしたチームBWMアーデンのドライバー、アントワーヌ・ユベールのマシンが高速コーナーから駆け上がるオールージュを抜けた出口でクラッシュし、レスキューカーで搬送されたが、治療の甲斐も無く8月31日の現地時間18:35に死亡が確認された。

F2選手権第9戦ベルギーGPは赤旗中止をやむなくされ、2周でそのまま終了となった。

近年のフォーミュラカー・カテゴリーでの主な死亡事故は2009年にはF2 第4戦ブランズハッチのレース2で、ジョン・サーティースの息子、ヘンリー・サーティスが頭部にタイヤが直撃して死亡。2014年のF1鈴鹿ではジュール・ビアンキがコントロールを失い、ホイールローダー(クレーン車)に頭部から潜り込んだ形で突っ込んでしまい頭部に重症を負う。翌年2015年に意識が戻らず他界した。

それ以前のフォーミュラカーのコックピットは、ドライバーのヘルメット部分がむき出しになっており、例えばクラッシュによりコックピット頭部からコンクリートウォールに直撃した場合、死亡する確率が高まる。

1994年にはアイルトン・セナサンマリノGP イモラサーキットの高速タンブレロコーナーで曲がれずに、コンクリートウォールに激突して帰らぬ人となった。死因の決定打はサスペンションアームがヘルメットを貫き、脳に致命的なダメージ受けたことだった。

2009年のハンガリーGPの予選では、ブラウンGPルーベンス・バリチェロが落としたパーツが、フェラーリフェリペ・マッサのヘルメット左頭部に直撃し、マッサは頭蓋骨損傷の重症を負った。その年は翌年復活の為にリハビリ生活を余儀なくされたが、2010年から見事な復帰を果たした。

FIAとF1関係者らはドライバーの安全を確保するために、様々な改善を行ってきた。例えばサーキットコースのランオフエリアやグラベルトラップなどの拡大やタイヤバリアの改善。


またマシンにはクラッシュ時の衝撃による、ドライバーの首へのダメージを避けるための「HANS」(画像下)とドライバーの頭部への安全を守るためにコックピット部に取り付けられる「HALO」(画像上)というものがあります。

「HANS」は頭部と首への衝撃力を少しでも弱める効果があります。強烈なGによる衝突の衝撃は、頚椎損傷などの頭部・頚部へのダメージを与え、それは少しでも減らさなければなりません。

「HALO」はマシンコックピット上があらわになっている状態から、クラッシュ時に発生する飛んできたタイヤなど飛来物や、他のマシンからの衝撃を防ぐ役目があります。

しかしこの「HANS」と「HALO」は共にデメリットもあります。もしマシンに重大な火災が生じた時は、コックピットからドライバーが脱出するのを遅れさせてしまう可能性もあるからです。

これで大抵のクラッシュによる死亡事故は無くなるだろうと思われていましたが、今回アントワーヌの事故死によって、それが崩れ去りました。

しかし高速でコース上を走るフォーミュラカーモータースポーツカーに100%完璧な安全などはないのです。非常に残念であり、避けなければならない事象ですが、私は個人的にこうしたカテゴリーに死はつきものだと思っています。

確かにベルギーGPのスパ・フランコルシャンサーキットは古くから、大事故が多い部類のサーキットでもあります。高速サーキットとスパウェザー(気まぐれの雨・独特な天候)という複雑な条件が重なったコースとも言えますが、とても魅力溢れるサーキットでもあります。

スパ名物の高速コーナー、オールージュ〜ラディヨンのコーナーは坂を駆け上がり、高速ストレートへ繋がる。ドライバーの目線から見ると「ブラインドコーナー」と言って、目の前がコンクリートウォールのように見えて先が見渡せないのです。

今回のアントワーヌの不幸な事故はそんな見通しの悪い状況で発生しました。

早速FIAは事故調査を始めていますが、アントワーヌに直撃してしまったのはファン・マヌエル・コレアがコーナーを駆け抜けた後、直後突然目の前に現れたアントワーヌの車を回避することは出来かったのだろうと思われます。

その前にスピンしたジュリアーノ・アレジに接触するのを避けて、ハンドルを右に切った際アントワーヌは狭いランオフエリアに突入し弾き出され、コース上に残る格好になってしまった。

大きな事故が起きると連鎖反応的に事故が引き起こされます。まるで地震が起きるような感じ、それは人間の意思では止められない不思議な現象です。

サーキットには魔物が棲んでいる…よく事故が発生する高速コーナーやシケインなど、こうも言われますが。きっと魔物ではなく人々のネガティブな集合意識がそれを引き寄せてしまう結果なのかもしれません。

サーキットでの大事故は、ある日突発的に発生してしまいます。仮にドライバーを守る「HALO」が、今後設計上ドライバーコックピットを覆うような形状になったとしても、今回のように高速でマシンとマシンがドライバーのコックピット部にモロ直撃した場合、いくら強度が高いカーボン・ファイバー・モノコックでも死は避けきれないと思います。

アントワーヌに激突してしまった、コレアもHALOがなければ助かってなかったと思います。現在集中治療室で安静状態を保っています。早い回復待ちたいと思います。

アントワーヌ・ユベールは昨年2018年のGP3王者で、今年はF2でモナコとフランスを勝利したフランス期待の新人でした。22歳という若さで命をなくした彼の死に哀悼の意を捧げたいと思います。

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No.19 Anthoine Hebert r.i.p.

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