レッドブルF1 ガスリーからアルボンへ
8月30日(金)から、夏休みを終えたF1サーカスの後半戦は始まる。
第13戦ベルギーGP スパ・フランコルシャンサーキットでの決勝は日本時間22:10からスタートする。
レッドブルは8月12日(金)にピエール・ガスリーからトロ・ロッソのアレクサンダー・アルボンのドライバー交代を発表してから13日経過した。
上 ピエール・ガスリー/下 アレクサンダー・アルボン
レッドブルは基本的に、他のチームよりシーズン中にドライバー人事の交代を行うチームである。結果を出せないドライバーはバッサリと切っていく方針である。
元レッドブルドライバー クビアトについて
そもそもレッドブルとトロ・ロッソは姉妹チームで過去もドライバーの交換は度々行われてきた。
初のロシア人ドライバー、ダニール・クビアトは2014年トロ・ロッソからデビュー。ラリーで有名な父を持つカルロス・サインツJrが先にF1昇格するのではないか?と思われていたがGP3でサインツを上回る成績を出して、先にクビアトがF1のシートを獲得することになる。
それは2013年のレッドブルのドライバーラインナップはセバスチャン・ベッテルとダニエル・リカルドだったが、その年の日本GPの時にベッテルがフェラーリ移籍が決まった為、クビアトが抜擢された。
翌年リカルドとクビアト体制のレッドブルだったが、2015年はクビアトは2位表彰台に上がるなど、力を見せたがリカルドと比べるとやはり決定力に欠けているドライバーとの評価である。リカルドは2013年には3勝しているドライバーである。
2016年にはリカルドが結果を出していたのに反してクビアトは予選が遅い。さらにベッテルとの接触事故、またチームメイトのリカルドとも接触とある程度の速さを見せるが、ドライビングの荒さからシーズン途中でレッドブル内では評価がだだ下がりになる。
そしてトロ・ロッソで速さを見せていたマックス・フェルスタッペンとクビアトの交代劇となる。事実上の強制降格である。
まるで今年のフェルスタッペンとガスリーのようだった。
しかしクビアトは今年ドイツGPトロ・ロッソで復活3位表彰台を果たしたが、ガスリーはレッドブルで一度も表彰台にも上がれずに終わった。ガスリーはメンタルが弱いのか?バトルも出来ず、予選も遅い。
でも一度お祓い箱になったクビアトをレッドブルのシートに座らせるほど、ヘルムート・マルコ(レッドブルF1のモータースポーツアドバイザー)はバカじゃない。
非情とも言われるレッドブルの突然のドライバー昇格・交代劇は、F1チームの中ではトップニュースに選ばれるほどである。
その昔、1991年第11戦のベルギーGPでジョーダングランプリから、メルセデスの秘蔵っ子として衝撃のデビューを果たしたミハエル・シューマッハは予選7番手という結果を出し、決勝は1周目でマシントラブルでリタイアしたものの、FOCA(フォーミュラ・ワン・コンストラクターズ・アソシエーション)会長バーニィー・エクレストンが裏から手を回して、当時のベネトンとメルセデスが接触し、次戦12戦目のイタリアGPではベネトンのブラジル人ドライバー・ロベルト・モレノと、ジョーダンのシューマッハとの電撃トレードがあったことが思い出される。
このようなシーズン途中のトレードドライバー交代劇は、ファンからしたら一見、理不尽なようにしか見えない場合もある。
ストーブリーグ(シーズンオフ中)での各チームとFOCAの根回しによる、または政治的・資金的な理由でドライバーをクビにするのはよくある。政治的なのはフェラーリ。あとはマクラーレン、ウィリアムズ、ベネトン(元ルノー)などドライバー同士、上層部とドライバーの確執などでよく行った。
なぜレッドブルはアレクサンダー・アルボンを選んだのか?
先月は波乱が起きたといえども、トロ・ロッソのクビアトはドイツGPで3位表彰台を果たした。2018年のクビアトは一年浪人生活を送った。
ガスリーのあまりにもバトルが下手なせいで、ポイントが取れずレッドブルのコンストラクターズ・ポイントランキングはメルセデス438ポイント、フェラーリ288ポイントに次ぐ、3位の244ポイントであるが、そのうちの181ポイントはフェルスタッペンののポイントである。
ドライバーズポイントで6位のガスリーはたったの63ポイントである。7位のカルロス・サインツJrとは5ポイント差しかない。ガスリーがもっとポイントをとっていればレッドブルのコンストラクターズはフェラーリを抜いて2位になっていると思います。
ガスリーがレッドブルのマシンと相性が合わず、さらにプレッシャーがかかっているから、と言われ続けていたが、それは言い訳である。そもそもレッドブルのシートを得られたのは、リカルドがルノーと契約し決定したので、急遽代わりのドライバーとしてトロ・ロッソから昇格しただけである。
ではアルボンではなく、クビアトの可能性はなかったのだろうか?現時点ではドライバーズポイントはクビアトは9位でアルボンは15位だ。
もしアルボンがレッドブルに乗ることで、ガスリー同様のプレッシャーがかかれば、彼は潰れてしまうだろう。レッドブル・ホンダがメルセデスとフェラーリに対して、高いパフォーマンスを持っているのは間違いない。フェルスタッペンとは行かないまでも表彰台には乗れる戦闘力のあるマシンである。後半戦アルボンにはそこが求められる。
日本のモータースポーツメディアでは「フェルスタッペンはホンダ&セナのように蜜月になる存在だ」と言っているが、実際フェルスタッペンは育成ドライバーになる時、メルセデス側からも誘われている。レッドブルとは2020年の契約も交わしたと発表したが、メルセデスも来年以降フェルスタッペンに触手を伸ばしている。
そこに大金が発生すれば、フェルスタッペンもメルセデスに移籍する可能性は大である。フェルスタッペンは久々に現れた近年稀に見ない、ミスを侵さない天才ドライバーである。フェルスタッペンがレッドブル・ホンダで今後も勝利することが出来なければ、彼はレッドブルから去る。
そのフェルスタッペンをチームメイトに持つのは、ドライバーとして半端ないプレッシャーになるはずだ。
現在F1ドライバーで能力の高いドライバーは、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペン、バルテリ・ボッタス、シャルル・ルクレールである。中堅どころでダニエル・リカルド、ニコ・ヒュルケンベルグくらいしかいない。
このドライバー達はワークスのメルセデスAMGとスクーデリア・フェラーリの取り合いであろう。
もちろんプライベーターのレッドブル、マクラーレン、も良いドライバーを確保したいはずである。ルノーはワークスチームなのに、マクラーレンより下という少し追い込まれた感が強く、F1から撤退という話もあるが、マクラーレンはランド・ノリスとカルロス・サインツJrが好調なのもあり、上向きである。
ルノーは高額年棒で契約したリカルド、来年の去就がわからないニコ・ヒュルケンベルグ。
レッドブルは前半戦半ばから、ガスリーを降格させる気は満々だったに違いない。
あとはガスリーの代わりである。
フェルスタッペンとも、ある程度バトルし、やり合える程のドライバーでなければ、レッドブルはコンストラクターズで上位を争うことが不可能になってくる。
これはパドックでの噂だったかも知れないが、シーズン途中でドライバー交代をさせるには、メルセデスとフェラーリの4人は固定。まず動くことはない。
では残るはルノーのヒュルケンベルグと、インディカーに、ル・マンに、F1のパドックに現れ、フラフラしている、あのフェルナンド・アロンソである。
発表では全く無いと言っているが、私は接触はあったと思う。ヒュルケンベルグは有りだとしても、レッドブルにはトレード要因がいない。アロンソは例のごとく問題児であり、ホンダPUをGP2エンジンと罵り、マクラーレン内部をボロボロにした(マクラーレンも相当悪いが)。
しかし腐っても元2度のワールドチャンピオンに輝いた、F1界でもドライバーとしての腕は評価されている。
ホンダとしてもアロンソとチーム関係を再び共にしたくもないだろうし、日本のファンもそりゃ嫌だし、私もアロンソは勘弁して欲しい。
ライコネンはアルファロメオで骨を埋めそうだし…
そうなるとやはり選択肢は未知の可能性にかけたアレクサンダー・アルボンしかなかったのだろう。
だが、個人的には不安でしかない。明確な根拠はないが、アルボンもガスリー同じく、レッドブルでフェルスタッペンに迫るような、速さは見せることが出来ない気がしてならない。
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