パチンコ店やから客とのトラブル 続
今日のパチンコ店への休業の協力要請ニュース。
読んでみて…だめだこりゃ。
ということで、早速昨日のつづき、いきます。
1階と2階フロア、カウンターと喫茶の昼休憩を回して、また現金回収の繰り返し。両替機の釣り銭切れや、パッキーカードエラーで従業員からインカムで呼ばれっぱなしでホールを走り回る。
班長の休みを平日に入れるので、早番のシフトは班長が一人のことが多い。この日も班長は俺一人。
あ、そういや、さっきの輩はどうなったんだろう???
店長から呼び出しのインカムもない。主任もホールに出て来ない。
15時には換金所へ持っていく万券を用意する。14時にはまた担当と金集めして事務所に行って計数し、金庫の万券と合わせて換金所に持って行かなきゃならんから、どうせ店長と主任とは会うか。
2階事務所側通路を歩き、外を見るとエルグランドはまだそのまま。レッカー呼んでない。
輩は事務所か?
午後から1階パチンコホールは混みだし、休憩回しは1階担当に任せて、今度は2階担当と万券回収する。
俺「業務連絡します。2階担当中央通路までお願いします」
2階担当「了解しましたー」
この日の担当は1階高橋さん(仮名)、2階桜井さん(仮名)で、2人ともにこのパチンコ店に来る前は違うチェーン店で主任をやっていたベテラン店員。俺はこの時26歳だったから2人は6歳〜年上。
桜井さん「班長、さっきのエルグランド、やっぱ輩でしょ?」
俺「うーん、多分ね。チンピラかと思ったけど、主任も手こずってたように見えるし、店長からも呼ばれないしね。まず換金所に持ってく万券作るわ」
桜井さん「了解ですー」
2人で各両替機から万券と五千円札を集める。
この店舗、この時代では巨大ホールで有名で、のちにベガスベガス札幌店に設置台数は抜かれるものの、それまで札幌一の設置台数を誇り、1階2階に両替機は14台、パッキーカード販売機は9台設置されていて、金回収に時間がかかった。なので換金所に持っていく万券も平日で午前中に300〜400万、午後に300〜500万、夜に800〜1,500万は持っていく。大幅新台入替の時には3,700万をバッグに入れて警棒を片手に構えて運んだ。
3,700万の時はさすがに緊張はした。
でも毎日触っているから万券の100枚束は金だと思えなかった。
金を集めて事務所へ行くと店長と輩が向かいあって応接用のソファに座っていた。
主任はデスクに座ってた。
俺 桜井「失礼します。ご苦労さまです」
主任「はい、ご苦労さん」
流し目で輩の方見ながら、計数機へ。2人はボソボソ喋ってて、よく話の内容は聞こえなかったが、穏やかな会話だった。
計数中にちょうど換金所からのFAXが来て、万券300枚、五千円券で100枚用意してくれとのこと。
引き出しから自分の判子を取り出し、金庫に金をまとめてバッグを取り出し、金を詰める。
俺「業務連絡します。高橋係員事務所までお願いします」
高橋さん「了解いたしました」
現金を換金所に持っていくには、防犯の為に鍵のかかった階段室を抜けて店舗から一旦外に出て迂回して換金所へ行くので、必ず全員警棒を持ち班長と担当従業員2人で行動することになっている。
高橋さんが事務所へ来て、
俺「主任、換金所に行ってきます」
主任「はーい、お願いしまーす」
俺 桜井 高橋「失礼します」
主任「はーい」
マスターキーで鍵を開けて階段室を抜けて、3人で外に出る。
俺「輩、いたね。何話してるかわからんかった」
桜井「なんか車の保険の話してましたよ」
俺「保険?車両保険?マジで?示談?せけぇ!俺らに客に譲歩しないで説得すれって、自分らは立場的に権限あるからってあっさり譲歩するのかよ…きたねぇな」
高橋「班長、上の人間なんてそんなもんですって、ははは。」
俺「いや、主任のニコニコ笑顔でわかってたけどね、明らかにアイツ、輩というか893だよね、あれ。」
桜井「多分、あの鉄板あいつがわざと曲げたんですよ、車に万力みたいのもっててやったんでしょ、あそこの連絡通路スピード出せないし、腹すったってあんなに曲がらんでしょ」
俺「確かに、なんであの分厚い敷鉄板曲がってんのか意味わからん。ごねられてんなら警察呼べばいいのにね」
高橋「警察呼ぶとめんどくさくなるからじゃないですかね、へへへ」
俺「そうか…」
換金所についておばちゃんに金を計数してもらい金額確認してから判子を押す。換金所のおばちゃんはおしゃべりだからあまり余計なことは喋らないようにしている。
ハマグリのように口が固いって言うけど、貝って焼いたらパカッと開いちゃうから、話したことは噂として流れて尾ひれはひれがついて皆に知れてしまう。
高橋さんに1階の最後の休憩を回してもらい、桜庭さんには2階のコイン補給の指示を出してもらうことにして、俺は事務所へ戻る。
すると輩はいなくて、店長と主任の2人。
俺「失礼します。ご苦労さまです」
主任「ご苦労さん」
店長「あい。」
店長「なぁ、カズな、あれで頼むわ。ちゃんと言っとけよ」
主任「はい、わかりました」
店長「加藤班長、参ったな!」
俺「はい?えー、なんでしょう?」
店長「さっきの客よ。うるせーから保険つかうことにしたわ。」
俺「マジっすか?いやー、しつこくて納得しなかったんですよ」(保険???)
店長「あの鉄板見たけど、相当なスピード出して通ったから、ひん曲がったのか?あれ早く撤去しないとな」
主任「あれはいくら加藤班長でも説得は無理だったな(笑)。俺の時も興奮して凄かったもんな」
店長「加藤、気をつけろよ。あまり強く出るとグサッと刺されるからな、ガハハハー」
俺「あ、はい。はははは…」(お前、いつもゴト師の追跡とかよくさせるよな。よく言えるわ)
店長「主任、班長、俺休憩入るわ」
主任 俺「了解しました。ご苦労さまです」
店長、事務所から退室。
主任「班長、引き継ぎやっちゃうわ」
俺「わかりました、スタッフルームからペーパー持ってきます。失礼します」
事務所を出て、裏階段を駆け上がり、スタッフルームへ。時刻は15時30分過ぎ。遅番連中がスタッフルームで待機している。
遅番の班長がいる。
俺「お疲れ様です。いやあ、今日大変だったわー。輩来てさ、今主任と引き継ぎしてから話すね、パチンコ両替機に1000円札、150万入ってるわ。あとスロットからパチンコ両替機に300万移動させてるね、じゃ引き継ぎ行ってくるわ」
遅番班長「マジっすか?はい、お疲れ様です」
裏階段を降りて事務所へ急ぐ。
コンコン。
俺「失礼します、ご苦労さまです」
主任「はい、ご苦労さん」
俺「主任、引き継ぎお願いします。今日なんですが、スロットからパチンコに万券300万移してます。」
主任「わかった。今日のフロアの割り振りな(紙)、それと従業員の引き継ぎ作業な(紙)。あと台帳の計算あってたから。あと昨日も景品割あわないから、ゴト注意して見させれや。さっきホール回ったけど汚ねえからよ、空き台清掃綺麗にやらせろな。あと、さっきの客居たろ?店長から、あのエルグランドあのまま停めて置けって言われたから、レッカー呼ばないでそのままにしとくから。引き継ぎ作業に書いてあるけど、車の下から流れてるオイルよ、綺麗に掃除させとけや。あとホールでなんかあったか?」
俺「特にありません…えー、はい、ありません。」
主任「じゃあ、休憩入るからあと頼むな」
俺「ご苦労さまです!」(やっと居なくなるか…フゥ)
2階のスタッフルームに上がって2人の班長らと引き継ぎ。
主任が決めた今日の遅番のフロアの従業員配置をホワイトボードに書いていく。1階……2階……、カウンター、サブ、キッサ…。
俺「班長、ちょっとホールいい?」
長渕班長(仮名)「いいっすよ」
能見班長(仮名)「はい」
俺は2人を事務所側通路に連れ出して、停車中の外のエルグランドを指さす。
俺「あの封鎖してる連絡通路の敷鉄板あるしょ?あの敷鉄板ひん曲がっててさ、そのひん曲がったとこを通過したら車体の裏こすって、オイル流れちゃって車動かなくなったからってさ、弁償すれや!って超粘られてさぁ…で、かくがくしかじか……」
長渕「敷鉄板曲がったの?」
俺「うん、軽く上に反って曲がってるわ」
長渕「マジで?」
3人で駐車場のエルグランドを見に行く。
俺「これさ、こいつ自分で曲げたんでない?車内になんか載せてないべか?」
長渕「フルスモで見えん(笑)」
俺「この件はあと店長と主任がやるから、ほっとけばいいんじゃないかね?」
スタッフルームに戻り、あとは通常の引き継ぎをしてホールへ戻る。
遅番の朝礼が終わって遅番連中と早番の交代タイム。
従業員に引き継ぎ作業を指示して、自販機のジュース入れと冷食入れ。その後事務所で少し片付け作業をしてから、スタッフルームに戻って終礼をしてやっと1日が終わる、明日は休みだー!休み!
休み明けに大惨事!
シフトは主任と店長以外全員、休み前は早番で休みの次の日は必ず遅番になる。
遅番は16時00分までに出勤。朝礼が16時50分から。
班長は早めに出勤するんだけど、俺はいつもぎりぎり。早く来たって意味ねーもん。
今日は早番の班長が2人いた。
俺「おはようございます。」
長渕「おはようございまーす」
長渕「班長、こないだのエルグランド燃えちゃって、朝一でうちに消防車来たんですよー」
俺「は?燃えた?なんで?」
長渕「消防7台来たって(笑)。しかもまた揉めてますよ、店にそいつ来て、なんでちゃんと管理しねーんだって怒っちゃって店長と言い合いしてましたから(笑)。警察も来たし、消防で調べたら多分放火だろうねって。」
俺「誰が放火するんだべか?もしかして自分でやっちゃったとか?」
長渕「それ!それっすよねー?それだったら馬鹿じゃないすか(笑)あははー。もしかしたら怨恨とかもあるかも知れませんね」
俺「どっちにしろ馬鹿だね(笑)。しかし凄いね、あいつ。マジで。車は敷鉄板で破壊されて動かなくなって、2日後には放火されて黒焦げで完全に車じゃなくなって、多分パチンコにも負けたんだろね、あいつ、やるね!」
俺は早速2階に駆け上がって立駐のエルグランドを見に行く。
あーあ、見るも無惨、黒焦げになってるっぽくて、上からすっぽりブルーシートをかけられていた。辺りの地面は放水の水が流れきれずに溜まっていた。そして周囲はとても焦げ臭く、鼻がツンとするほどだった。
遅番が始まり、店長もあらわれず。主任が中休憩上がりで寮から降りて来て、事務所に来たのが21時ちょうど。
主任が寝起きで超不機嫌。
あー、嫌だわ。嫌なこんな時でも引き継ぎしなきゃならない。
何を話してもただ聞いてるだけで、反応無し。缶コーヒー片手に目を閉じてぼーっとしてタバコをひたすら吸ってる。大丈夫か?こいつ?
一度事務所から出て金集めをし始めてから、再度事務所で札を計数しに行くと、機嫌が直ってる。情緒不安定か!
主任「班長、引き継ぎで聞いたと思うけどよぉ、おとつい文句言ってた奴のエルグランドな、早朝に爆発音あって炎上して、近隣の住人がパチンコ店から黒い煙が出てるってよ、通報あったんだってよ」
俺「あー、店長か主任が通報したんじゃなくて、他から通報があったんですかー!」
主任「そうだよ、バカ!俺も店長も寝てたよ!朝の4時過ぎだぞ!寝てるって!俺、全然気づかなくてな、店長から電話来て、カズ!早く起きろ!って言われてよぉ!無理やり起こされて迷惑な話だよな〜」
俺「マジっすか、なんで燃えたんすか?オイル漏れでそのオイルに着火して爆発とかないっすよね?」
主任「放火だってよ、放火。警察調べてったけど、誰かが車内に灯油撒いて火つけたらしいぞ、事件になるんじゃねーか。昼にな、エルグランドの持ち主来てな店長と話してたけど、一旦帰るって店から出て、その後その持ち主と連絡取れないのよな、それが…」
俺「誰が火つけたんすかね?早朝に…」
主任「それよ、それな。持ち主は店員が火つけたとか訳分からんこと言ってたけどな。恨みかも知れんしな」
俺「車燃やすなんてこえーっスね!」
主任「まさかうちの駐車場で客の停めてる車が燃えるなんてな!思わんよな!」
金を計数し終わるタイミングで店長が現れた。時刻は22時ちょい過ぎ。どうやら、こちらは本当に機嫌が悪そう。
そんなこんなで閉店した後、また金を集めて売り上げ計算。
店長は疲れたのか、この日は一言もこの件に関しては話さなかった。
のちに分かったことだが、どうやら火をつけたのはエルグランドの持ち主で警察が捜査に入ったとの話を主任から教えてもらう。
やはり全て本人の自作自演のようで、俺に文句をつけてきたエルグランドの持ち主は、初めに車を傷付けて、店からなんやかんや言いがかりをつけて現金を引き出そうとしていたと。
そしてうまく金を引き出せなかったし、車両保険でもあの理由の物損じゃ、金にならない可能性が大だと。困って結局動けなくなった車を何とかレッカーせず、金にしようと思った考えが、大掛かりな事故に見せかけて車を燃やし、保険で大金をせしめようとしたようらしいが、あまりにもやり方が短絡的。
一体何がしたかったのか…。
でも多分、是が非でも現金が欲しかったのかと思うと、あの強引な手口から見て、やはり切羽詰まったどっかの構成員だったのか?と予想。
その数週間後、燃えた階の下の2階の立駐で覚せい剤の売人が車内にいるところを、巡回中のパトカーが職質して逮捕し、事務所にまた警察が来ていた。そしてその警察にドキドキして、ケボってしまった俺(笑)。
トラブルは続く。
しかし、保険なんて簡単におりんでしょ。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。