パチンコ店やから客とのトラブル
新型コロナウイルスにより、政府や各都道府県が休業要請をしている中、未だ殆どのパチンコ店が営業を再開しており、店舗の営業自粛が騒がれている。
パチンコ…
時代は97年〜01年のとあるパチンコチェーン店。自分が業界にいた時代、パチンコが30兆円産業とか持て囃されて、ピークに達していた時代。
パチンコではCR機も登場し、パチスロでは裏基盤を使用した裏物やサブ基盤を使用したAT機が続々とリリースをした。パチンコ・パチスロ共に爆裂仕様機種が多く登場し、射幸性も跳ね上がりギャンブル性は高く、やがて衰退していった消費者金融業者もこのパチンコ黄金時代の波にのって稼ぎに稼いだ。
そこはもはや庶民の遊技場ではなくなり、万券飛び交う鉄火場の賭場と変化した。
それも消費者である客層は若い女性や主婦をターゲットにし、業界側の雇用も新卒に大卒を採用するなど変わっていった。
今でも思い出されるのは数々の客とのトラブル。
現金商売だったから金銭トラブルがほとんど。
「財布を盗まれた」「出玉を盗られた」「ロッカーから物盗まれた」「車上荒らしにあった」「出玉が足りない」「景品カードの枚数が足りない」「パンク補償しろ」「大当たりしたのに玉が出なかった」「両替機に1万円札入れたのに千円が5枚しか出てこない(もしくはまったく出てこない)」「換金所で貰った金が足りない」「敷地内で怪我した。一体どうしてくれるんだ」などなど…
そのどれもほとんどが客の勘違いか故意。こちらの間違えもあるが、それはほんの僅かでしかない。
ある日、重大な事案が発生した。
それは2階立体駐車場での問題。
パチスロ台間サンドの千円札を回収して両替機へ補充、順番に両替機の万券を回収して1階のパッキー販売機のドアを開いていた時にインカムで呼ばれる。
2階担当「当店班長、2階事務所側通路お願いします」
俺「了解しました」
島通路を通って事務所側通路へ回ると、見た目はイカにもそっち系な男と2階の担当が立っていた。
俺は2階担当に聞く。
俺「何?どしたの?」
2階担当「それが、立駐のあの場所で車体の下こすって、オイルがもれちゃって車が動かないとのことで…」
俺「どの車?」
2階担当「あれです。」
外を見ると白いエルグランドが停まっていて、車の下から何か大量に漏れているのが見えた。
多分オイルパンが損傷してオイル漏れを起こしているのだろうが、その時は車まで行かなかった為に客の嘘で水かも知れないと思った。
俺「駐車場での事故等は当店で責任は負いかねますっ言った?」
2階担当「あ、はい、えー、言ったんですが、納得してもらえなくて、店長呼べって聞かないんです…」
俺「……分かった。いいよ、ホール回ってて。」
2階担当「すいません、お願いします。」
立体駐車場は自走式で本館の第1と第2の2つがあった。第1立駐は3階まで、第2立駐は6階(屋上)まであった。
“当店の駐車場や店内での盗難、事故など当店で一切の責任を負いかねます。貴重品等はお客様のお手元に置かれまして自己管理でお願いします”と各玄関と景品カウンターに但し書きがしてあるのと、館内マイクアナウンスで30分に1回お客様へのご案内として放送していたので、何かあった時は従業員がこの説明をして客を説得せねばならない。
こういった問題は一度許すと同じような問題が立て続けに起こり、トラブルを起こして店から金を引き出そうと考えだす輩が後を絶たない。
この時点でこの案件は絶対俺で食い止めなきゃいかんな、と思った。
輩「おい!店長呼べって」
俺「店長は只今外出中でして、現在私がホールの責任者ですが、なんでしょう?」
輩「じゃあなあ、よく聞け。あそこに白のエルグランドがあるのがわしの車。お前んとこの駐車場走っとったら腹こすってえらい音してな、車が動かんくなったわ、これどうやって責任とる?」
俺「申し訳ございません。当店の店内、または駐車場内での盗難、また事故などの責任は一切負いかねますのでご理解ください。」
輩「お前のとこで弁償せいや、当たり前だろが!保険屋呼ぶからよ」
俺「呼んで頂いても構いませんが、お客様の方で対応して下さい。」
輩「お前のとこの駐車場のせいで車壊したんぞ!」
俺「納得されないようなら、どうぞお客様の方で警察を呼ばれても構いませんが。」
輩「警察呼べや?お前名前なんちゅーのよ?言えや名前。納得行くはずねぇだろが、こんなの。お前車まで来て見に来いや!」
俺「申し訳ございませんが、この通りただいま現金回収をしておりまして外に出ることも出来ませんし、私一人でお客様のお車の状態をご確認することは出来ません。」
輩「お前の駐車場のせいで壊れたんやぞ!弁償するの当たり前やろが!」
俺「お気持ちは分かりますが、当店の規則に則りましてこういった問題などお客様みなさまにご理解して頂いております。」
輩「規則、規則ってうるさいわ!見てみいって!あの鉄板ひん曲がってるだろが!あんなもんの上走って見れや!腹するだろが!なんであんなもん置いてんのよ!」
3階の第2立体駐車場から第1立体駐車場へ移る、渡し部分の通路地面のコンクリがだいぶ前から一部損壊しており、応急処置的に敷鉄板が敷かれていたのだが、従業員が毎日ゴミ拾いの際に駐車場チェックを行っていてそんな報告も聞いていないし、あの分厚い敷鉄板が曲がるか?その男曰く、敷鉄板の一部が上方向にひん曲がって飛び出てるという。
輩「鉄板が上に反って曲がってんだぞ?あんなのどんな車でも通ったら車高高くてもフロアに引っかかるわ」
俺「とりあえず確認はしてみますが、少々お待ちいただけますか?」
輩「早くすれや!」
互いに押し問答して輩も一向に引く気配はない。まず金を事務所において来なきゃと思ったところ、主任からインカムが入った。
主任「業務連絡ー!加藤班長!どーした?」
俺「業務連絡します。えー、かくがくしかじか…なんですが。」
主任「班長、事務所まで」
俺「了解しました」
従業員と2人でいると言っても、ドル箱に詰めた万券も回収途中で現金を携えたまま、この場に長居するのもよろしくない。
俺「ただいま事務所に行ってから戻りますのでお待ちください。」
輩「……。」
従業員と急いで裏階段を降りて事務所へ向かう。
俺「めんどくせー!」
1階担当「あれ、筋もんじゃないですかね?」
俺「いやー、チンピラでしょ。しかし、あそこの鉄板曲がってたっけかね?あれオイルかね?」
1階担当「曲がってないですよ、班長が話してる間、車の方見てましたけど、漏れてんの確かにあれはオイルですよ間違いなく。ミッションオイルじゃないですかね?」
俺「あー、俺目ェ悪いから見えないんだわ。しかし鉄板曲がってるって、なんで?言いがかりなんじゃね?」
そして、事務所へ入り、万券と五千円券を計数した後、金庫に金をしまい、ことの説明を主任に詳しく伝えた。
主任「鉄板で腹すったってか?確認したか?」
俺「お金持ってたんで…」
主任「担当と一緒にその車見てこいや、そんでレッカー勝手に呼べって。こっちで補償なんてしねーからな」
俺「はい、わかってます」
俺は事務所をでると、1階担当と一緒に輩客の待つ、2階フロアへ急いだ。
すると輩客がいない。
俺「???」
1階担当「探して来ます」
俺「んじゃ、俺喫茶側から探してみるわ、高橋さん・仮名(1階担当)トイレ側から探して!」
オイルの流れているエルグランドは同じ場所に止まってるが、輩客がいない。
レッカーか、警察呼んだか?各玄関先入口を探す。トイレも。カウンターにもいない。
まさか?車にいるのか?事務所側通路に戻ると、運転席に誰かがいる。
玄関から外に出て、一人でエルグランドに向かう。すると輩がいた。インカムで1階担当を呼ぶ。
輩「おい、これだ、これ。エンジンかけるぞ、見れよ!かからんよな?どうするよ、これよ」
エンジンを何度もかけるがかからない。やはり漏れているのはオイル。高橋さんと一緒に車の底部を見る、場所的にやはりオイルパンが破損してる模様。
俺「お客さん、車が傷ついた敷鉄板の場所まで来てくれます?ちょっと見ますので」
3人で敷鉄板の場所まで行くと、なんと!
敷鉄板の角の部分が上方向に反って曲がってる!
はあ?!何だこれ!
車の底部がぶつかりその力で曲がった??嘘だべ?マジでか?
輩「これはオタクらの責任だろ、どう考えてもよ、こんなの走っててわからんよな?どうしたって腹こするべや」
やべぇ、どんどん面倒くさくなってきた。
しかし駐車場での事故は一切補償出来ないことを繰り返し伝えるが、全然納得せず。インカムが鳴る。
主任「業務連絡ー。当店加藤班長、納得したか?」
俺「業務連絡します。えー、現場の方確認しまして、オイルの方漏れて、エンジンがかからない状態です。レッカーをお客様の方で呼んで貰うように何度も説明しているのですが、納得されません。ただいま続けて話ししております。」
主任「いいわ、班長、事務所側にお客さん連れてこいや」
俺「了解しました」
あー、グチグチ言われんな、これは。
輩客を連れて事務所側通路へ。主任が来た。
主任「班長、ホール回れや」
俺「わかりました……」
余計な時間を使われたので、回し遅れていた休憩をインカムで回していく。すると…
主任「業務連絡です。加藤班長、事務所側通路お回りください」
俺「了解しました」
輩客と主任が笑顔で話してる。ん?
主任「班長、あそこの敷鉄板通れないように、あれ、カラーコーンとコーンバーあったろ。あれ両サイドに置いとけや」
俺「は、はい」
あったっけか?コーンバーなんて。カラーコーンは倉庫にあるけど、、、。
二次被害が出たら困るので従業員を呼んで通れないように封鎖しておく。
なんとか見つけて立駐を封鎖した。手書きの「進入禁止」の張り紙を貼り付けておいた。ホールへ戻ると主任と輩客は消えていた。
しばらくして、事務所からのインカムが入る。
店長「主任!事務所まで!」
主任「了解しましたー!」
あっ!店長戻ってきやがったよ!やべえわ。絶対言われる。
事態はその後、急展開をする。それは俺が早番の昼過ぎの出来事だった…。
つづく。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。