パチンコ人生記 回る風車はクルクルと。【15】
☆この物語はすべてフィクションであり、登場人物団体等の名称は架空のもので実在のものとはなんら関係ありません。
<登場人物>
<店長>猪田
<主任>坂下
<班長>湯川、河東
<男子従業員>岩佐、小林、見富、高橋、桜田、八戸、内藤、木本
<女性従業員>田辺
─ それぞれの思惑
【岩佐のケース】
相変わらず俺はバカラ札幌店の担当従業員をこなしてる。班長が湯川、大場さん、下岡君、河東君で安定して来てる。まぁ俺はしばらくいいや。のんびり行こう。
班長に上がったばかりの河東君は大変そうだ。しばらく彼の様子を見ておくことにする。
しかし上からの無理難題はたまったもんじゃない。
今現在担当の数は俺と見富君、高橋さん、桜田さん、小林君と、実にちゃんと担当仕事をこなせる従業員が居なくなった。担当者が足りない番は適当な従業員を当てていた。
女性従業員でオープン当初カウンター班長のような女性がいたようだったらしいが、店長と直接揉め事を起こしてそれ以来女性は担当にも上げない方針になったとか...。カウンターでタバコの数が減るので、タバコ倉庫は常に鍵をかけることになったとか...。古い噂。
俺が入った頃の古株の担当者が続々と消えていったことで、仕事はまともに出来る奴はいないし、ホールはそれでもって大変なことになるしで直ぐに担当へ上がったのはいいが、まったく不運なクジを引いたものだ。
古株で残ってるのは28歳の八戸さん、最年長39歳の内藤さん、あと33歳の木本さん位か。彼らも主任や店長から嫌われていて八戸さんは某パチンコ店の元主任だったのにも関わらず、店長の指示で担当を外された。しかし彼は辞めない。
担当を下ろされた従業員は他の一般従業員より多少プライドがある為、すぐに辞めていく。汚れ仕事ばかり回されるからだ。
まずは店長の一番のお気に入りだった20歳の金子君。19歳で担当者だった砂子田君、29歳の仕事がもっとも出来た有能な担当者佐藤学人さん、全員湯川絡みで辞めていった。
湯川がこの店の一番「癌」かも知れない。みんな湯川さえいなければ…と口を揃える。
とにかく湯川に媚びないと意地悪されて、店長にあることないこと報告されて、主任へ指示があり事務所に呼び出され説教と指導が始まる。
こないだも閉店作業が終わって、1階と2階担当で湯川に作業終了を伝え、スタッフルームで終礼を従業員全員で待機していてもなかなか班長が来ない。時計はAM1時半を過ぎた。
やっとスタッフルーム来たと思ったらマジカルチェイサーとミルキーバーのレールが汚れてるから、今から全員で1階に降りてレール拭きをやり直させろと主任を通じて湯川が怒鳴って言ってきた。
しかも担当者は班長だけに注意されるのではなく、主任にも小言を言われる。
主任「お前らよ、どうなってんだ?従業員にしっかり作業させてんのか?チェックしてんのか?担当下ろすぞ、ふざけんなよ!」(ていうか...担当は役職でもなんでもなくてただの従業員なんですけどね)
俺「はい、すみません。注意して仕事します」
今度は早番で開店前のこと、パチンコの窓枠・パチスロの台枠チェックを1階2階担当が全て責任持って台がしっかり閉まってるかどうか確認しなければならない。
ドアには一台一台センサーが付いていて、きちんと閉まっていないと事務所のモニターでその島の台がズームアップになる。それが本モニターにつながり録画が始まり(当時はVHSテープ)すぐ分かるようになっている。
開店前主任は気まぐれに毎朝チェックしてるらしいのだが、たまたま開いて開店してしまうと即インカムが入って事務所に呼ばれる。
主任「業務連絡ー。1階担当、事務所まで」
俺「了解しました」
主任「おい、岩佐! ファインプレーの窓枠開いてんじゃねぇか!お前ちゃんとチェックすれや!ふざけた仕事してんじゃねぇぞコラ、おい!」
俺「はい、すみません。注意します」
はっきり言って1階2階合わせて約2,000台もある、開店前の台チェックを担当者が一人でやるのは不可能に等しい。だからナンバー2の従業員に任せていたりする。
一般従業員は入社したばかりだったりとか、基本的に責任感がない為台チェックは適当。だから開いている時が多い。
開店前にパチンコ窓枠が全台開いてるのは閉店後に店長と主任が釘を叩くために、全て開けっ放しにしておく。彼らは釘を叩く時台鍵は持って歩かないからだ。理由はいちいち窓枠をあけるのが面倒だから。
パチスロ台枠は班長が設定を打つが、閉店後しっかり担当が閉まってるかどうか?閉店作業で確認してから終礼となる。パチスロの場合はゴトの場合があるから鍵はしっかりと閉める。セコムはしてるが。
確かに開店して窓枠や台枠が開いてるのは大変なことである。たまに主任は事務所のデスクで寝腐っていてお客さんからナンバーランプで呼ばれて「窓枠開いてるよ」と言われることがある。そんなお客さんには感謝しかない。
悪い客だとパチスロなんかはホッパーからメダルを盗む奴がいるからな。パチスロにおいて一番困るのが他店メダルの持ち込み。これをやられるとゴトが入ったような景品割になるんで、閉店後また主任からうるさく怒鳴られる。
まぁ、俺は慣れたけどね。今日は田辺も俺も休みなんで一緒に過ごす。カラオケでも行くかな?
【小林のケース】
ある日2階担当で、閉店作業中に委託してる掃除業者にのスタッフさんから、あるものを手渡された。
清掃スタッフ「あのぅ、すみません。これどうしたらいいでしょうか?」20ℓくらいのプラ袋に入れられた大量の使用済み注射器。注射器には血が混じってたりする。
あ!これ、かっちゃんとこ持ってってやるか?
俺「おーい!かっちゃんの好きなもん持って来てやったぞ!」
かっちゃんは2階パチスロのメダル洗浄機を直していた。
河東「なによ?」
俺「ほれ!」
河東「は?ポンプ?なんだこりゃ?全部使った後のシャキ(注射器)じゃねーか!いらねーよ。」
俺「いや、貰ってくれって(笑)」
河東「ゴミに放りこんどけや」
俺「いや、これ医療廃棄物だから普通に捨てたらまずくね?」
河東「構わん、構わん。なんかにくるんで分からんようにして、外のゴミステーションに捨ててきてや」
俺「分かったわー、知らんよ俺は(笑)せっかく持って来てやったのによー」
河東「持って来てくれるんなら、新品頼むわ(笑)」
また、ある日のこと早番の時に。
主任「業務連絡、当店河東班長、他店周り出して下さい」
河東「了解しました。小林係員1階中央通路までお願いします」
小林「了解しました」
中央通路で待ってるとかっちゃんが走って2階から降りて来た。
河東「わりぃけどたてまわり頼むわ。1階の休憩回しておくから。班長一人の時に限ってこうだもな。参るよな、ガス代も出ないしよ」
小林「確かになガソリン代出せよな。ま、いいよ。そしたら行ってくるわ〜」
河東「あ!ついでに、すまんけどビッグハウスでブロン買ってきてくんない?釣りいらんから」
小林「(笑)いいよ、ちょっと遅くなってもいいべ?」
河東「あん、早番でたてまわり出せってことは、まーた店長いないんだべ?多分。」
一緒に事務所へ行き、数取器カウンターをかっちゃんから貰う。
河東「じゃ、小林君頼むわ」
主任「小林君悪いな」(ニタニタ)
小林「いえ(ニコッ)、では行ってきます。失礼します」(90度のお辞儀)
主任「はい、ごくろうさん」
他店周りは競合店ライバル店の客入りの人数を数えてくる。大体近場にあるんだが、うちの店の近くには無くて、車で回らなきゃならない。
まず一番遠いパチパチハッピーハッピー東店(約4.4km)行ってから、ビッグ王様環状店、そして一番近い最近出来たばっかりのパチ屋、パーラーライジングサン苗穂店を回って終わりだ。あとは寄り道したり車の中で時間潰したり...
大抵は客の人数なんてどこも変わらん。平日と土日祝日は把握してるから適当。でもおすすめのコーナーとかイベントとかも報告しなきゃいけないから、あまり手を抜くとバレる。あとで店長から事務所に呼ばれたりするから。
最近はハッピーハッピーより遠い、パチンコ玉次郎まで他店周りに行けと言われて、4店舗だよ。ま、サボれるからいいがな。
俺「業務連絡します、小林他店周り行ってきます、1階ホールお願いします」
従業員「了解しました」
従業員「了解致しました」
従業員「了解しました」
河東「了解しました、お願いします」
駐車場に行ってエンジンをかけて、ハッピーハッピーに向かった。だりぃな、適当にカウントしとくか…
そんな感じで約1時間で戻った。
俺「業務連絡します。小林ホール戻りました」
従業員「了解しました」
従業員「了解しました」
従業員「了解致しましたー!」
河東「了解しました、ご苦労さまです」
それから遅番連中が出勤してきた。
俺「業務連絡します。小林休憩入ります」
従業員「了解しました」
従業員「了解しました」
店長「(ガタゴト...)河東班長、事務所まで!」
河東「了解しました!」
かっちゃんが呼ばれた。しばらくしてからスタッフルームに戻ってきた。
河東「ちょっと、バッシー来てくんない?」
俺「ん?どうした?」
河東「ライジングサンのイベントと玉次郎の沖スロコーナーの頭取り取ってなかったぞ!なまら言われたべや」
俺「マジか、すまん、かっちゃん」
河東「まあ、いいけど、あと時間あまりかけずにたてまわり行って来てくんない?遅番はいいけど、早番の場合主任がうるせーからさ。」
俺「わかったわー」
いちいちうるせーな。伝書鳩するなや。わかってんだろ?お前も。あー、早く辞めたい。
【湯川のケース】
最近の主任の適当さにうんざりだ。
ウチの店はある組織の893がケツ持ちしてる。札幌の組織ではない、猪田店長が昔から付き合いのある田舎893。しかし腐っても893。最近は頻繁に事務所に出入りしてる。
明らかに店長は打ち子を使って出玉を抜いてる。
しかもだ、主任も怪しい。
俺はパーラーキング昭和で副主任をしていた。だいたい業界の裏側事情は把握している。パチンコ店の店長は現在はグループ経営になり雇われで、店長がそのさらに上に出世することも難しい。
高齢になっていくと本部からリストラされる可能性も高くなる。昔ながらの個人店舗のような家族経営は年齢気にせず、店長をやってられるが組織化され巨大グループ企業ともなると常に営業成績に「数字と結果」が求められる。
だから能力の乏しい雇われ店長はクビを切られる前に打ち子使って金を店から不正行為を働いてトコトン抜く。そしてある程度の金を貯めておくのである。
店長レベルがやれば内部告発も出ない限り、絶対、いやほとんどバレない。続けていつか時がくればバレるかもしれないが。
ウチの店長、猪田店長は36歳、今のパチンコ業界では年配の方だ(1998年当時)。他店では若い店長で21とか22歳レベルの店長がいんのよ。
若い奴ってのは頭が凝り固まっていないから洗脳して奴隷にしやすい。オーナーやエリア長、本部上からの指示も真面目に言うことを聞く。つまり使いやすいということよ。な!
年配になってくると過去の固定観念に縛られて新しいアイディアを取り入れようとしない。例えばイベントにしてもそうだ。新しい企画をチャレンジしようとしないのだな。
そんな店長は黒のベンツ600SELを乗っていたが、かなり前に紺色のキャデラックに乗り換えた。購入したのは1994年型のフリートウッド。
(イメージ画像)
俺はあの間抜けな主任がセルシオを買ったので俺も買ってやった。主任のは20系後期ワインレッドの一つ上の型4.0C仕様Fパッケージ。俺は20系後期のカラーはブラックで4.0B仕様をローンで買った。
あの馬鹿には負けたくない。車は男のステータスだ。見栄張ってなんぼのこの世界。負けるもんか!
☆最後までお読みいただきましてありがとうございます。