パチンコ人生記 回る風車はクルクルと。【10】
☆このストーリーはフィクションです。登場人物や会社名などは架空のものです。
<登場人物>
<店長>猪田
<主任>坂下
<班長>湯川
<男子従業員>小林、河東、八田、木本、高橋、他
<女子従業員>米川、岡崎、津島、菅野
【河東のケース】
河東「ゴトさ、うちかなり入られてるで」
小林「まじでか?」
河東「この店さ、オープンしたばかりの時にチャイニーズ系らしい手口のゴト師集団に狙われて、セコム突破されて台に裏基盤付けられたんだってよ」
小林「まじか」
河東「対策強化したら、そいつら結局2階の喫茶からガラス破って侵入して警報鳴って逃がしたとか...」
小林「セキュリティ甘くね?」
河東「いやいや年々ゴトの手口も進化してるからな。ホッパーゴトなんて簡単に出来るから。店舗の外壁から穴空けてスロット台の裏側から不正基盤取り付ける輩もいるからな。おっかねーぞ」
小林「まだ俺はゴト発見したことないからな。しかしあのアルゼのホッパーにパッキー貼るの意味あんのか?」
河東「いや、意味ねえべ」
小林「あれよ、閉店後深夜までやらされてよ、残業代も出ねえのにいかれてるよな。嫌がらせだべ」
河東「じゃあよ、俺の初めてのゴト師確保の話してやるから…」
─ ゴトの一件Part.1
俺はさ、その日早番で1階パチンコフロアの担当でホール巡回していたのよ。
1階スタッフは木本、高橋、菅野でカウンターメインが米川さん、サブが岡崎さん、喫茶は津島さん、2階は八田さんが担当だったか…いつもと同じような人数がギリギリの体制で営業していたのよ。
カウンターサブが1階に入って貰わないと昼休憩回すのに大変だからな。とはいえ、早くサブを休憩入れないと今度カウンターと喫茶の休憩のタイミングがズレていく。常に誰かが一人が休憩に入ってる状態だからよ。
早番班長は湯川ね。まだ班長が1人体制だった時さ。だから担当が休憩回すべさ?班長は事務所居たり換金所に金持って行ったり、金集めしなきゃならんし、カウンターに入ったり、頭取り(遊戯台の客数を数える)やったり、自販機のジュース入れ、冷食入ればっかやっててさ、ほとんど湯川なんてホール巡回しねーべ。
だけどあいつやっぱりしっかり見るとこ見てて、ホールが汚れてたり空き台清掃怠ってたら、インカムで呼ばれて小言言われる訳よ。
客の入り具合を見極めてインカムで休憩入れて行かなきゃならないべさ。こちとらゴトも注意しないといけないし、開店と12時と15時の呼び込みマイクやらなきゃいけないべ?1時間ごとのトイレ・休憩所チェックもあるしで、まぁ俺たち担当もいっぱいいっぱいなんだよな。
こんなのブロン飲まなきゃやってられねーわ!って話。
その日の昼休憩全て回した後に突然インカムが騒々しくなったんだよ。
湯川から「業務連絡です。1階担当河東係員、今中央通路で歩いている、グレーのパーカーのお客さん分かりますか?」
俺「業務連絡します。ただいま確認します」
湯川「了解しました、分かったら教えて下さい」
俺「了解しました」
早速中央通路へ走った俺はグレーのパーカーの客を発見した。湯川はどうやら事務所にいる様子。事務所のマイクが繋がると俺らが聞いてるインカムはハッキリ透き通って聞こえる。
湯川「業務連絡です、河東係員そのお客さんの後を尾けてもらえますか?」
主任「1階担当、気づかれないように後ろからついて行ってください」
マジかよ、バレないように尾行するんか…島中通路グルッと回って尾けていく。
俺「業務連絡します。了解しました。すいません木本係員ホールお願いします」
木本「了解しました」
俺「業務連絡します。先程のお客様トイレの方に向かいます」(その客はモンスターハウスの島の出玉の様子を見ながら、トイレへ行く)
店長、ガタガタッ(インカムの音)「河東くん、トイレ入ったらそいつ出てくるの待っててくれるか?」
俺「了解しました」
トイレから離れて中央通路の東側駐車場玄関口に隠れて潜む。多分怪しい奴だからその後をつけろって話だろうな。俺が一人ホール巡回しない間に呼び出しランプがつきはじめ途切れず、他の従業員が大忙しに走りまくってる。
店長「河東くん、カウンター行くようだったらインカム入れてくれ」
俺「了解しました」
出てきたその客は景品カウンターには行かずこちらへ来た。
俺「業務連絡します、中央通路を向かってフルーツパッションの方へ行きます」
店長「了解。そのままホール巡回してくれな」
俺「了解しました」
一体何なんだ?事務所側通路から角台3台に3人並んで座ってドル箱を山積みしてた。グレーのパーカーは2台目に座った。他CRフルーツパッションには出していない客2人がだいぶ間をあけて座って打っている。
気にせずにホール巡回に入った。フルーツパッションの島を無視して巡回していると、しばらくしてからまたインカムが入った。
湯川「業務連絡です。河東係員フルーツパッションまでお回り下さい」
俺「了解しました」
走って急ぐ、するとやはりあのフルーツパッションの事務所側通路から3台並びの客を囲んで主任と湯川が突っ立っていた。客は遊戯をやめて何か話をしている様子なんだわ。なんだ?なんだ?遠目から見てなんだか嫌な予感したわけよ。
客の3人は何も話さず、そっぽを向いていた。主任は事務所の店長とインカムで話してる。
店長「主任!その3人何か喋ったか?」
主任「業務連絡です...ガガっ...ジジっ...して...ますが...して、おります...あのー...ガガっ...ジジっ...」
俺は湯川に聞いた「班長、なんですか?ゴトですか?」すると湯川は首を縦に振りながら口を濁した。
主任「班長、ちょっとインカム俺のと変えてくれ」
湯川「はい」
店長「おい、何してんだよ!いいから!お前何言ってんだかわからん!主任!事務所まで!」
主任「湯川班長、ちょっと一緒に事務所に来てくれ」
湯川「え?あ、はい。主任、ここどうしましょう?」
主任「河東くん、ここで3人座らせたまま立たせないように見張っててくれ」
は?1VS3?
無理じゃん。ホールも従業員他2人しかいないし、絶対ゴト師じゃんコイツら!1人で抑えとけってドゆこと?俺を見捨てる気か?
主任らがいなくなってから、いきなり3台目に座ってる奴が椅子を立って俺に話しかけてきた。
3台目の男「ちょっと!漏れそうなんだけど便所行かせてくんない?」
俺「みなさん動くなって言われてますんで座ってもらえますか?」(初めての経験で俺はゴト師相手に不甲斐なくも敬語...)
と言ったところ1台目角台の奴がいきなり立ちやがって、ダッシュして事務所側通路に向かって逃げやがった!それと同時に2台目と3台目の男も中央通路へ向かって逃げた!俺は「あっ!あ!」と思いきや、一瞬で両方の動きにどうにも対応出来ず、初めての対ゴト師でどうすれば良いか分からずにパニック。取り抑えれば良かったのか?
すると湯川が現れ「おい!カワ!あと2人どうした?」
俺「一人が便所行かせてくれって言われて...そのスキ突かれて...2人が中央通路に一気に走って逃げられました、追いかけたんですが...」
さらに店長が現れて「逃がしたのか…仕方ねえな、主任に言ったのに...あいつ何やってんだ!いったい!ったくよお!」
店長「いいや...河東くん、このフルーツパッション3台に整備中の札入れて電源落としておいてくれ。湯川班長出玉の方頼むな」(この大量の出玉は一体どうするんだ?謎)
湯川「はい、了解です」
俺「業務連絡します。河東○○○番台開けます」
って3台電源切って整備中の札を窓枠を開けてガラスの内側に入れて閉めた。
その後しばらくして湯川に中央通路へ呼ばれた。
湯川「何やってんのよ。カワお前あれゴト師だったんだぞ、逃がしてどーすんのよ。事務所側で店長が1人捕まえたからいいものの。店長怒ってるって」
俺「班長、あれだけ言われてもマジ無理っすよー。1人で3人相手は抑えられんかったですよ!」(俺の知ったことか!)
湯川「まぁ、主任が一番悪いんだけどな。俺は主任の指示で動いただけだから何も言われなかったけどな、主任かなり怒られてたぞ。でも巻き添え喰らって後で主任に文句言われそうだな俺も。カワもなんか言われるかもしれんぞ」
その後金集めで湯川と事務所に金を計数しに行った時に、さっきのゴト師1人が捕まっていて事務所のソファーに座らせられていた。そして店長と主任に詰められていた。さらに電話で警察を呼ばれていた(しかし警官が来た様子は無かった、何故?)。
遅番との引き継ぎ時間に知ったのが、どうやらあいつらがやってたのは、フルーツパッションの電波ゴトだったらしい。
電波ゴトとは電波発射機ゴトといってCRフルーツパッション(権利モノ)の場合、体感器との組み合わせによってスタートセンサーに通過した玉を遅らせて大当たりを発生させるやり方だったらしい。セルのゴトかと思ったが、やはり捕獲した一人の体から体感器が出てきたらしい。
主任からその後チクッと注意をうけた。なんで俺が責められなきゃならんのだ!早番の上がる時事務所へタイムカードを押した時に店長に呼ばれ、
店長「おい!河東くん、無事で良かったな。刺されなくてな、ガハハハハ!」
俺「あ、は、はい...」
なんだ?このクソ店長?舐めてんのか?このゴミクズが!俺たちをなんだと思ってんだよ!最初っからテメーがフルーツパッションの島に来るか、3人まとめて連行すれば良かったんじゃねーか!おめーは殿様気取りか?
って思いながら自分のネームに台鍵掛けて、怒りのタイムカードをガッツリ挿し込んだのよ。舐めてるべ普通に。下手して取り抑えようとすれば俺は怪我してるぞ!
河東「だべ?そう思わん?」
小林「確かにな、ヤベーな猪田。従業員にはそう言うのか…」
河東「だべ?そう思うべ?」
小林「お...おう…」
河東「なぁ?違うか?」
小林「い、いいや…」
河東の饒舌大陸な語りは続いた…(笑)
☆最後までお読み頂きましてありがとうございます。