kemoxxxxxの日記

kemo cityからの脱出

愛した映画・15

パピヨン

【1973年アメリカ・フランス製作】

スティーブ・マックィーンの出演映画の中で一番大好きな映画。マックイーンといえば『大脱走』『ゲッタウェイ』などなど、、、 この『パピヨン』は私の中で最高傑作と言っても良い。

名優ダスティン・ホフマンも共演してるから何度もよく観る。

著者が体験した実話であり本人アンリ・シャリエールによって描かれた作品。

4年前、母の遺品整理の際に間違えて『パピヨン』のDVDを捨ててしまったので、再度am͜a͉zonで買い直して久しぶりに鑑賞した。

母が亡くなってからDVDレンタルも行かなくなった。

昔眠れない時に深夜、よく母と散歩がてら朝5時まで営業しているGEOにDVDを借りに行き、雪道を歩いた…。

そして2人で朝まで鑑賞。 時間を無駄にしたのだろうか…あの日母と連日毎夜映画を観た。いや母との大切な思い出である。パピヨンのように自分の殻に閉じこもる日は続いた。

劇中、常に生々しい「生と死」が展開する。明日を生き延びるのが精一杯で“悪魔島”なる孤島が存在し、島送りになれば決して生きて帰ることは出来ない。

近代社会においては自由や民主主義は存在するが社会は自由人を嫌う。 この映画を見る度に『自由が如何に幸せか』を感じると同時に、自由を求めてばかりで誰も責任をとらない今の時代に、自分も自己の権利主張意味を履き違えないように気を引き締めなければならないと深く考える。

これはただの脱獄映画ではない。




「祖国フランスはお前らを見捨てたのだ!フランスを忘れよ!」

彼の名はアンリ・シャリエール、通称パピヨン(スティーブ・マックイーン)は手錠で繋がれた状況から物語は始まる。 パピヨンは犯罪を重ねながら、仲間に裏切られ投獄される。 だがパピヨンは無実を主張しており、脱獄を心に固く誓うのであった。

罪は終身刑。 囚人らは祖国フランスを追放されて、フランス領の南米ギアナのデビルズ島で強制労働をすることになった。 鎖で繋がれ歩くパピヨン

彼の女らしき人がパピヨンに声をかける。 「パピヨン!」

パピヨンは脱獄を決意しながら、ギアナへ行く船へ乗って行った…それはもうこの地には戻れない地獄への片道切符なのである。 脱獄する為には看守も買収しなければならない。

船内で偽金作りの名人 ルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)を紹介される。ドガ国債偽造の罪で捕まった。脱獄のためには金がいる。 囚人が集まる船内ではいつ誰が消されるか分からない。 ドガは船内で殺されかけるもパピヨンに助けられ、二人は仲間になる。そこからパピヨンドガの不思議な人間ドラマが始まった。

獄中でもがものを言う世界である。 塀の中でも娑婆でも金。 とにかく金、金、金。がなければ死ぬしかない。

しかしドガは一体どのようにして金を隠し持っていたのかが気になった…湯水の如く生み出すドガの偽金。これはパピヨンの脱獄のために使われ、やがてドガ自身も以後脱獄を共にすることになる。

この映画を見ていると権力と金によって支配する側と、奴隷とされる囚人側の目を背けたくなる非現実的な世界がそこにある。人間が人間を家畜のように扱う場所であり、夢であって欲しいとさえ思う。

ギアナの監獄では強制労働所有り、また金かコネさえあれば楽な仕事も有り、冒頭で見た地獄島なんてのも有り、なんと恐ろしいのだろう。 その仕事の割り振りは看守次第である。 何も持たざる者は強制労働組である。囚人同士でも騙し騙され、殺し合い。

パピヨン達は「サン・ローラン刑務所」へ着き所長の演説が始まる… 「脱獄の1回目は2年の独房、2回目は5年の独房、3回目はギロチン」だと。

その後実際に受刑者の処刑を目にしたパピヨン。落ちた首から血がほとばしる。(フランスのギロチンは実に残酷な処刑である)

パピヨンは脱獄することしか頭に無い。しかし実行後、騙されてあっさりと簡単に捕まってしまう。

「ここの規則は完全な沈黙だ。人間を破壊する場所だ。希望は全て捨てろ」

まずは一度目の独房で地獄を味わうこととなる(アンリ・シャリエールは実際8度の脱獄を敢行したのだが、映画ではストーリー上3度の脱獄のみである)。

そこは2畳ほどの狭く、薄暗く汚いコンクリート製の独房である。食事は泥水のようなスープのみ。大半はこの独房で力尽き弱り果て病死してしまうのであった。

ドガパピヨンに栄養がつくようにと裏から手を回し、コソっとヤシの実をパピヨンの独房に送り続けていた。

『ヤシの実を食べて栄養をつけるんだ』

ヒゲと髪を切る日にパピヨンは独房の穴から頭を出す。すると隣の囚人がパピヨンに話しかける。

「鏡が無いからわからん、俺の顔は元気かね?」 それはそれは酷い顔をしていて、死相が出ていた。 パピヨンは「ああ、元気だよ」という。

次の髭剃りの日、隣の囚人は顔を出さなかった…。 こんなところでくたばってたまるか!と決意した パピヨンはヤシの実を頬張り、毎日運動を繰り返して体力をつけていく。

しかしドガが送っていたヤシの実がバレてしまう。

この独房にはサイレントと書いてあり、その名の通り沈黙の独房である。

所長はパピヨンに、ヤシの実を送った人物を言わせ吐かせようとするも彼は頑なに言わない。絶対に仲間は売らない。

暗闇と沈黙の中、飢餓がパピヨンを襲う。 あまりのストレスで大抵は皆続々と倒れ死んで行く。

ヤシの実を送った奴を言わなければ、食事は半分、房内は真っ暗闇で過ごすことになる。 人間は暗闇と沈黙の中では生きてゆけない。固形物を食べないと人間は歯が勝手に抜ける。スティーブ・マックイーンの魅せる演技力が光る。この独房のシーンは絶対に見逃せない。

気が狂いかけたパピヨンは、髭剃りの時に隣の房の囚人に、以前自分が聞かれたことをそのまま言っていた。 「鏡が無いからわからん、俺の顔は元気かね?」と。

「ああ、ここで死ぬものか!」 と吐いたパピヨンを見て、人間の限界とも思える驚異の精神力を視聴者に見せつけた。

食事が無ければ、虫も食う。 それが生きのびるためならば。

そして、廃人寸前で2年間の独房入りから解かれた。



栄養失調で瀕死で倒れ、しばらく病棟にいたパピヨンだが、 何くそ。彼の頭の中には、やはり脱獄の二文字しかない。

今度の脱獄計画はすんなりと成功しかけた、 ドガ達は捕まったがパピヨンは逃げた。人間狩りが始まった。

パピヨンは走る。逃げる。走る。逃げる、走る。 夢中になって走り、逃げ、人間狩りに捕まりかけたその時、気がつくと崖から滑り落ちて川に流されてしまう。



パピヨンが目覚めて…流された先はインディゴ族の集落にいた。 集落でしばらく今までにない静かな時間をインディゴ族の少女と過ごした。パピヨンはいっときの幸せを感じていた。エメラルドグリーンの海がとても美しい。

この映画は始まりから終わりまで海だ。その色はディープ・ブルーからスカイ・ブルーへ、エメラルドグリーンへと海の移り変わりを非常に上手く使っている。強制労働や独房、雨を使った泥臭いシーンなど、また無表情で物語るシーンと迫真の演技とのギャップ。これが視聴者の求める最高のアンチヒーロー、マックイーンじゃあないか。ここで数日過ごすパピヨンがこの映画を通して一番幸せにみえた素敵な場面だと思う。脱獄成功か?と。

ある時酋長に呼ばれ、身振り手振りでパピヨンの胸に入っている、 「蝶」の入れ墨をいれて欲しいと頼まれ、パピヨンは酋長の胸に自分と同「蝶」の刺青を彫る。

深い眠りにおちたパピヨンが目覚めた時には、村からインディゴ族は消えていた。入れ墨の御礼だろうか、傍の木には真珠の袋が置かれていた。

国境を越えるバスに乗り込むパピヨンだったが検問に引っかかってしまう。そこで丁度後ろから来た教会の馬車へ行き、シスターの持つコップに真珠を入れると馬車に無言で乗り込んだ。シスターはキョトンとしている。まんまと検問を突破した。

教会へついたパピヨンだったが尼僧に通報されて、またまたあっさりと捕まることに。



とうとう身も心もボロボロになったパピヨン。 5年間の独房入りから出た姿は老いた老人そのものだった。

そして誰も絶対に逃げられないあの「悪魔島」孤島へと送られることになる。

しかしその島にはなんとドガがいた。その孤島は潮の流れが激しく、鮫もウヨウヨしている為、絶対に逃げられない天然の要塞だった。

しかしパピヨンは新しい脱出方法を思いつき、これなら潮の流れにのって出られる!とドガに一緒にこの孤島を逃げようと提案するも…

長い拘束生活に飼い慣らされてしまったのか、ドガは、「すまない、ぼくはいけない」と言った。

椰子の実だけを集めて浮き輪にしたようなもので、 この島から出ようと言うのだ、無謀な話である。 タイミングを間違えば強い潮流の波の力で押し返され、椰子の実は断崖絶壁に弾かれバラバラになった。失敗すれば生きて戻ることは無い。

何度も浮き輪を投げチャレンジするパピヨンを、傍目で見るドガは心配をしていた。

「パピヨンのテーマ Theme from Papillon」ジェリー・ゴールドスミス、Jerry Goldsmith - YouTube

「動画参照:Youtube (プライバシーポリシー)

やっと潮の流れを読んだパピヨンは脱出のタイミングを掴む。いよいよ決行の時が来た。2人は固い握手をして抱き合う。別れの時だ。

チャンスは一度きり。椰子の実の浮き輪を投げるパピヨン、崖から飛び降り椰子の実を必死に抱きつかみ、荒波を超えながら、木の葉のようにゆらゆらと沖へ流れてゆく…。

それを見送るドガ

とうとうパピヨンは自由を得たのだった。

そう…「蝶」のように空へと……限りなく自由なブルーへ…

パピヨンベネズエラにたどり着き市民権を得た。 悪名高きサン・ローラン刑務所はパピヨンほど長生きせず滅びた。今もこの映画を見る者にパピヨンの不屈の意志と魂と精神力を学ばされ心に残るだろう。

そして人生はドガのように思考停止をして一生を過ごすのか……

はたまたパピヨンのように行動することで自由を求めるかは自らに問いかけ後悔せずに…。


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