機動戦士ガンダムZZ 現代のカミーユ・ビダンを考える
アニメ版Zガンダム 最終話で精神崩壊をして、パイロットとしての運命を終えてしまったカミーユ・ビダン。
ガンダムZZ 第1話ではプレリュードZZと称して、これまでのティターンズとアクシズとエゥーゴの争いを軽く振り返る回だったのだが、そこでカミーユはアーガマのベッドで眠りながらファに看病されている姿が映っていた。
第4話「熱血のマシュマー」ではマシュマーの前に現れたファと車椅子に乗ったカミーユが登場。
一時的にシャングリラコロニーの病院に入院したようだ。
果たしてカミーユの病状の診断はなんだったのか?
第6話「ズサの脅威」ズサに乗ったマシュマーがコロニーの山の手を襲う。
どうやら山の手の下町付近に学校や病院があるらしく、その病院にはカミーユがいるようで、カミーユのことを心配したファはゼータで出撃した。
その後アーガマはシャングリラコロニーから出航することになるのだが、カミーユの病状が安定しないのでファはブライトに告げてアーガマを降り、カミーユの看病をすることになった。
ただでさえも足りないアーガマのパイロットスタッフからファがアーガマを降りてまでということは、カミーユの病気をシャングリラコロニーの病院では治療が難しい状況なのだということを思わせる。
現代の統合失調症とは
さて、現在の代表的な精神病は統合失調症であろう。
統合失調症とは生物学的な基盤がある脳の病気である。病状は幻覚、妄想また興奮など激しい症状に陥り、また意欲の低下と無気力、引きこもりや自閉、感情の起伏の喪失、対人接触障害など多彩な精神症状を呈する。
アムロの父親テム・レイは連邦軍技術士官でRX-78の設計に携わったが、酸素欠乏症により頭がおかしくなった。同様におかしくなったカミーユは、宇宙世紀の統合失調症というべきものだろうか?
現代の統合失調症の当てはまる症状を挙げてみる。
妄想、幻覚、興奮、意欲の低下、自閉などなど…
シロッコにトドメを指した時に、カミーユはヘルメットを脱いで光る星を彗星といい、暑いからここを出してくれと叫んで、まず初めの異常さを見せた。これはまさしく妄想、幻覚である。
宇宙空間で現れたこの症状は、まさにカミーユは強烈な重度の統合失調症を発症したのではないか?
第2話「シャングリラの少年」では、ファはカミーユを病院へ連れていこうとエレカーを出すが、ヤザンの口車に乗せられたジュドー、ビーチャ、モンドは目の虚ろなカミーユを見ることになる。ジュドーはそのカミーユから何かを感じる。
しかしここでのカミーユはまさに異常な佇み、それは意欲の低下と自閉である。
後の第33話「ダブリンの午後」でファとカミーユは宇宙から地球に降りており、ファはダブリンの病院で働いていて、そこでカミーユは治療をしていたのだった。
第35話「落ちてきた空」ではネオ・ジオン軍によるコロニー落としが迫ってきているのを感じとり、カミーユはベッドで苦しんで病院から脱走してしまう。まさしく興奮である。
統合失調症の分類
その統合失調症には3つの分類に分けることが出来る。
陽性症状、陰性症状、記憶障害症状。
陽性症状には妄想と言って自分にはないことを確信することがある。次に幻覚で聞こえないはずの声や音が聞こえたり、ないものや実在しないものが見えたりして、それを現実的な感覚として知覚する。最後に思考障害で思考が混乱し、やがて自分が何を話しているのか分からなくなる状態に陥る。
陰性症状には感情鈍麻になり他者の感情表現に共感することが少なくなる。次に会話で比喩など抽象的な言い回しが出来なくなり、理解が出来なくなる。そして意欲の欠如が出てきて自発的にやろうとする意欲が湧かなくなってしまう。最後に自閉で自分の殻にとじこもってしまい、他者とのコミユニケーションが取れなくなる。
認知機能低下には記憶力の低下で物事を覚えられなくなる。次に注意力と集中力の低下で目の前のことに集中出来なくなり、考えをまとめたりすることが出来なくなる。最後に判断力の低下で物事の優先順位の判断や、計画を立てられなくなる。
前兆期→急性期→消耗期→回復期
順番をダブルゼータから遡って見ていきます。
カミーユはジュドー達に不思議な感覚を伝えてファとアウドムラを降りた。この時はまさに回復期だと思われる。消耗期では恐らくシャングリラコロニー、ダブリンの病院での薬物投与を続けていてゆっくり治療していたものと思われる。
急性期ではまさにZガンダムのアクシズ、ティターンズ、エゥーゴの三つ巴戦に発症したと思われます。
前兆期はZガンダムの後半に数々の仲間が生命を落とし、エマにロザミィが強化人間だとクワトロが言っていると勝手に思ったり、走って逃げるロザミィの姿を「フォウ!」と叫んだり、ついにロザミィを亡くした後にクワトロが見たあのカミーユの姿だと思います。
前兆期とは目立った症状はなく、何か変だと周りも感じるようになり、本人の自覚もあります。眠れなかったり、イライラしたり集中力の低下が見られます。ここでのカミーユはニュータイプなので逆に集中力は高まったようです。
急性期とは幻覚や妄想などで不思議な体験をすることにより、自分の中でより変だと感じながらも自分が病気だとも思えず、他人から見ておかしい行動だと思われるような行為をします。そして周りの状況からも敏感になって強い不安や緊張を感じます。
消耗期とは心身共に疲れ果てて幻覚や妄想など無くなりますが、急性期に使い果たしたエネルギーによってよく眠るようになります。それはエネルギーを蓄えるため活動が鈍くなるからです。
回復期とは消耗期を経て社会と関わろうとする時期です。この時期の回復度合いは様々で急性期から引きずってきた幻覚や妄想を再発することもあります。また回復期は会話が乏しい、気力がない、関心がないなどの症状が目立ち長期間続く場合があります。まさにこの回復期を乗り越えるのが厳しく、焦らず見守り投薬治療を続けて安定期を長期間続けることが重要になってきます。
統合失調症の治療
実際に統合失調症の治療法を見ていくと主に薬物療法が中心にはなっていく。あと一般的には精神療法(患者に対しての支持的療法とその疾患に対する説明)と心理社会的介入(入院治療やリハビリテーションなどの社会参加や社会復帰)がある。
私が統合失調症と診断された時の治療法は投薬治療でしかなかった。他の治療法は手間と時間もかかるし何より病院側の報酬が上がらない。病院は利益を得る為に大量の薬を出す。
ちなみに私が当時飲んでいた薬はリフレックス、ジプレキサ、エチゾラム(デパス)、セロクエル、フルニトラゼパム(サイレース)、マイスリー、ロゼレム、ドンペリドン、トラゾドン(レスリン)、リボトリール、セディールの11種類を統合失調症を診断時、初回に一気に処方された。服薬方法はエチゾラムは頓服、フルニトラゼパム、マイスリー、ロゼレム、トラゾドンは就寝時薬でそれ以外は朝昼晩食後薬。
その統合失調症を治った?とされるきっかけは「投薬治療を止めること」だった。
カミーユが元気に海辺を走れるまでになったのも、ジュドーやプルに会って自らの過去の記憶に触れ、自分を取り戻したことだっただろう。
薬物療法を否定する訳じゃないけれど、一生薬を飲み続けても統合失調症は治らない。
回復期の段階で医師や医学療法士が投薬を減らして行かねばならないのに、薬は一向に減らさない。
薬を減らすと言うと「それはとても危険な行為だ!」と危ぶまれた。
まるでカミーユがクワトロやアムロに危ぶまれた「それ以上彼女(強化人間)に近付くな!取り込まれてしまうぞ!」と言わんばかりの精神科医の発言である。
つまり自分らの食い扶持の為には多少減らしたとしても患者本人が薬を止めるか、または死ぬまで薬は飲ませるのが精神科医の一生である。
薬を飲んで治らない病を薬を飲んでその一生を終えるのか?
一生飲み続けて健康になる薬など世界に存在しない。
統合失調症とは脳の病気と書いたが、心の病でもある。脳は薬で操作出来たとしても心のコントロールは薬で行うことは不可能に近い。何故ならヤク中でも日常で必ず心の迷いが発生する。己の薬に対する葛藤と悩み戦い続けて、またクスリをやる。
処方箋であろうが、市販薬だろうが、はたまた違法薬物だったとしても一度中毒になれば、抜け出すのは容易ではなく、抜け出したと思われても死ぬまで毎日薬を再開するか?飲まないか?の選択に迫られながら生きることになる。
だからそこまで中毒に陥る前に薬はやめるべきである。薬で脳を怠けさせるのではなく、鍛えさせてうつ病などの病状を回復させる方法は医師でなくとも調べれば沢山ある。
だいたい多くの人が面倒くさがる方法である。例えば瞑想やヨガ。スポーツなど運動も効果はある。規則正しい行動も効果がある。朝早く起きて隅々まで拭き掃除をして体を動かし、粗食で過ごし、日中は太陽に浴びて、運動をする。そして風呂に入り夜は早く眠る。これを毎日繰り返せば眠れないと言うこともなくなるし、病気になる暇などないと思うのだが。
厳しいことを言うがうつ病など基本的に“怠惰”なのだ。人は早急に物事の結果を求めたがるが、状況を良くしたければ長い目を見て腰を据えて根気よく試すべきだ。
重度の統合失調症には効かないが、普通のうつ病など効果はある。実際それらで私は良くなった。現在も継続中である。
繰り返すが統合失調症の治療はより薬物療法を控えるようにし、それより精神療法と心理社会的介入をもっと多く試すべきである。
でなければカミーユのような回復は一生望めない。