kemoxxxxxの日記

kemo cityからの脱出

とんぼ 第1話「アニキが帰ってきた街」

長渕剛演じる小川英二「とんぼ」は昭和における名作ドラマとなった。TBSで放送され1988年10月7日〜11月25日まで第1話から8話までに凝縮されまとめられたものであった。

2006年にDVD発売の予定が出たが、制作販売元TBSの都合で発売は中止された。長渕側とTBS側が折り合わなかったとも言われている。謎の発売中止理由である。

ドラマ「とんぼ」は、原作映画「竜二」(花城竜二役、故・金子正次主演)の二番煎じとも言われてますが、黒土三男監督と長渕剛のタッグで作られた小川英二も評価されても良いはずです。多分長渕はこの竜二に憧れて作ったんだと思いますが、この2作品は元来別のものとして見るべきかと思います。「とんぼ」に埋もれてしまった映画「竜二」も最高の傑作だと思います。

長渕演じる英二は竜二と酷似していますが(劇中で登場するセリフ「華の都大東京」など)、そもそもの話の流れが全く違います。始まりから中盤にかけては全く話の流れが全く違います。そして最後の竜二と英二は共に最後は悲しいエンディングになっています(共に自分の女との別れになりますが、竜二は奥さんへ離れたところで無言で見つめあいながらの別れてヤクザに逆戻り。英二は組長を殺したことで波子に自首を伝えて最後の電話をかけて、その後組員に襲われ刺される)。

そんな不思議な名作「とんぼ」のワンシーン。本当にDVDBOX作ってくれないですかね。

マジで大好きなんです!あの頃の長渕が、「とんぼ」が!リスペクトです!


暴力団八田組に帰ってきた小川英二

組長「いや、いかんいかんいかん、この英二はな煎茶は飲まん。意外と神経質な奴でな、お茶でも薬でも中国のものしか飲まんのだよ、アッハッハッハッハッ、他になんかねぇか」

英二「おやっさん、飲みもんはいいっすから、ちょっと2人だけで」

出典www.youtube.com

英二は胃が悪く、タバコは吸うが(長渕剛自身タバコは吸わない)酒も弱い。だから普段は中国の鉄観音茶しか飲まない。鉄観音(てっかんのん)とは中国十大銘茶の一つで烏龍茶の一種と呼ばれフルーティーで優しい味である。

組長「いや!この峰山君なら心配いらん!俺の秘書代わりでな、なんせお前慶応大学の法学部卒だ、アッハッハッハッハッ」

英二「おやっさん、サシでお願いします」

組長「...そうか、じゃあ峰山君...」

(峰山退室)

峰山も真っ赤なドレス。このドラマ自体バブル真っ只中の背景があり、ボディコン姿、ブティックが流行ったり、人々の生活や英二の広いマンション、波子の店カクテル専門店など明らかに80年代後半を思わせる。

組長「悪りぃけど英二、30分位しか時間ねーぞ」

英二「結構です」

組長「とにかくあれだよ、英二、お前もさ、帰ってきたばっかなんだし、しばらくゆっくり骨休めでも遊んで、悪いようにせんから」

英二「その言葉額面通りいただいてもよろしいんでしょうか。ムショ入る前仰ってた約束と、出てきたらシマは全部オレに任せるって」

組長「もちろんその事ではオレもちゃんと考えてあるよ」

英二「考えてるだけですか?...妙な噂を耳にしたもんですから」

組長「噂?」

英二「ムショ入ってますと、表にいるときよっか、ずっと色んな情報入ってくんですよ...ムショから出てきてもオレの居場所はどこにもねえって...」

組長「なに?」

英二「栃木の会長さん殺らしたのも、オレをハメるためだったとか」

組長「ハメる?バカも休み休み言え!」

英二「いえいえ、噂ですよ、噂」

組長「噂だろうとなんだろうと、なんで、オレが、右腕代わりのお前をムショに送らにゃならんのだ!」

英二「怖がってたって言うんですよ」

組長「怖がってた?」

通常若頭が次の組長候補になるのですが、日本最大の暴力団の例でもそうですが、オヤジに引退をせまるのはよくあることです。しかし本来は「義理」「人情」「渡世」「任侠」の世界に生きる昔の極道はそんな親に歯向かうことはしません。しかし現代ヤクザはそんなことを忘れてしまいました。本当に排除すべき暴力団です。「もう必要悪ではないと思います」そうなってしまったのは警察と政治家にも重大な責任があると思います。

英二「そのうち全部持っていかれるんじゃないかって組長が俺のことを怖がってたって言うんですよ」

組長「クックックックックックッ...くだらん!実にくだらんな、ハッ!」

英二「まだ続きあるんですよ、栃木の会長さん、死んでくれりゃ、10年が、20年がくらい込む計算が、ドジりかましたばっかりに2年で出てくるんで...オヤジさん困ってるとか」

組長「もういい!聞きたくねえ、そんな話!不愉快だ!胸糞が悪くなる!馬鹿野郎」

英二「ただぁ...」

組長「なんだ?」

英二「俺の舎弟だった石橋がのさばってるってるのは本当ですか?今じゃ、あいつのシノギが全部いってるってのは本当ですか?」

石橋とは英二の舎弟で刑務所に入っている間は英二の代わりをやっていた。役を演じていたのは懐かしい“ゆーとぴあ”のピース。

組長「一時的だよ、一時的にあいつはお前の代わりをやらせてるんだ」

英二「ほいじゃ、返せて貰って結構ですね?」

組長「いや!それはちょっと待てよ!」

組長「さっきから言ってるじゃねーか、俺も考えてるって、だから!急かすなよ!悪ぃようにしねぇから、なぁ!俺に任せろ!ウッ!」(肩を叩く)

(引き出しから封筒を取り出しテーブルへ投げ捨てる)

組長「はい」

英二「なんすかこれ?」

組長「20万入ってるよ。これで風呂でも入ってゆっくり...」

英二「20万っすか」

組長「とりあえずだよ!お前が帰ってくると知ってたらもっと用意してたよ!」

知っていたくせに白々しいオヤジ。このバブルの時代にとりあえず20万という金額はあまりにも少なすぎでこれは出所したばかりの若頭小川英二を馬鹿にしてるとしかいいようがない!

英二「フゥー.......」

組長「チッ!さてっと!」

英二「おやっさん、オレ、ムショの中で考え過ぎてたことがあるんすよ、、、、はぁ、俺も長い間ゴロツキやってますけど、人様に負い目だけは作って来たことはありません。ケジメだけはキッチリ付けてきたつもりです.......その俺を、まさかカマスつもりはないですよね?、、、、そん時や、キッチリケジメだけは付けさせてもらいますよ。そういうもんですよね?組長」

もうこの時点で八田組長との完全に反目になるのは明白だった。

この話は暴力団の他団体との抗争ではなく、内輪もめ。内部での抗争でありヤクザ組織としては全くお粗末である。しかし英二の言い分はもっともで「若頭である重要なポストの人間が組織に裏切られる」感が否めない。

英二が八田組のヒットマンになったということは、それまでは組長にたいして「親と子の義理」を強く持っていたはずだ。だから10年以上の懲役をくらい込むヒットマンの役目を背負った。

つとめを終えた英二をさらに追いやりポイ捨てする気だった八田組長。その原因はまた英二にも問題があり「ドジった」と言っているように、栃木の会長を殺せなかったのが原因であったようだ。

それともそれ以前に組長とは不仲で英二自身に組織に対する不信感があり、オヤジを試すためにわざと英二は「ドジった」のかもしれない?そうなると組長への忠誠心は元々薄かったのかもしれないとも考察できる。

八田組組長八田昇は、小川英二と鉄あん兄にやったことはあまりにも横暴であり結果殺すという目的に至ったが、そもそもこういう野望高き男、小川英二を組織に置くということはとても危険である。英二は一匹狼という性質をもっていてとても組員には尊敬されないのではないだろうか?(ツネや鉄を除いて)


この後組長と話しを終えた英二は組の賭博場、ルーレットで赤の3を見事に当てる。20万を賭けたのだ。36倍だから720万円である。

英二「悪いけどキャッシュで頼むぞ」

うろたえる暴力団八田組の組長八田昇の姿があった。

このシーンは第1話で絶対必要な場面であり、出所して来た八田組若頭である英二が、出迎えに舎弟である水戸常吉しか来ないという普通極道世界では考えられない異常な事態に、ムショ帰りの若頭・英二が最初に組長と対立するシーンである。


長渕のこのヤクザ演技は「とんぼ」から始まったものである。また組長役の中野誠也も良かった。今思えば「とんぼ」のキャストは万全の布陣だった。

この長渕との共演で一気に名が売れた哀川翔(水戸常吉役)。そして石倉三郎(英二と兄弟分の「鉄」役)、秋吉久美子(英二の女になる宮沢波子)に、仙道敦子(妹役小川あずさ)。

寺島進(八田組組員役「直」)、大滝秀治(特別出演・元マル暴の刑事役)、梅宮辰夫(特別出演・広島の叔父貴竹尻建造役)、植木等(河合松次郎役・小川兄妹の親代わり)、他。

とんぼからなんか徐々に長渕剛も変わってしまって(映画「オルゴール」やドラマ「シャボン玉」までは良かったけど...)、「あの人は今」(別の意味)的な感じになってしまったけれど...。

自分はテレビを見ないから現在誰が有名だとか、誰が出てるとか知りませんけれどもね、少なくとも昭和はテレビの全盛期だったのは間違いありません。

古くても良いものは良い!

☆最後までお読みいただきましてありがとうございます。