kemoxxxxxの日記

kemo cityからの脱出

田原成貴とトウカイテイオー 【修正】

公開日:2016年5月24日 更新日:2020年4月27日

俺の競馬最盛期。

あのレースだよ。あのレースが獲れてりゃ…な。

何度も振り返ってしまう、時は1993年の有馬記念。

福永洋一から天才の異名を受け継いだ田原成貴。

俺は田原が好きだったなあ。トップジョッキーを引退してから、一流調教師の階段へ登りかける半ばで、一気に地に堕ちた生き様もいいね。

覚せい剤に手を出して3度も薬物関連で逮捕された心の弱さが、天才と言われた人でもやっぱ何処か普通の人間と同じなんだ、と思えるところ。

俺自身が過去薬物経験者でこういった人達の心情を少しは理解出来るのもある。

ジョッキー時代の田原のあの手綱捌きは天性なものでしかない。

騎乗数が増え河内洋と関西リーディングを争う中、落馬による負傷(腎臓摘出、腰椎骨盤骨折など)が相次ぎ、さらに武豊が現れてから関西リーディングでは勝ち鞍が減っていった。

それでも田原のスター性は輝いていた。まぁルックスから言っても武豊なんかより、長身で名言もカッコ良さ抜群だったしな。

今思えば、幾度の骨折と怪我が多かったガラスの脚を持つ名馬トウカイテイオーと同じように、田原もまた怪我に悩まされ、腰の爆弾を抱えたために騎乗数を減らして記憶に残るGⅠ勝利を重ねた、破天荒な天才騎手だった。勝利数よりも騎乗馬との濃いレースをするようになる。

今では1,000勝騎手なんかは当たり前と思われているが、当時は凄い勝ち鞍数だった。

JRAでは騎手時代の勝利数を1,000超えると調教師試験の第一次試験が免除される。

一方、トウカイテイオーは血統優秀、スタイル抜群、皐月賞馬・ダービー馬のクラシック2冠でルックスは鼻白美脚ときた。

トウカイテイオーは「流星鼻梁小白断鼻小白断上唇小白」という素晴らしいお顔だ。

だけど鞍上は岡部。岡部は嫌い。馬券は岡部を外して買わなかった時が多い。

まあ好き嫌いで馬券を買うこと自体競馬、賭け事のセンスはゼロ!

しかしこの年、1993年の岡部&ビワハヤヒデは圧倒的な強さを誇っていた。何と言っても有馬記念まで連対率100%。トウカイテイオーは骨折で去年から一年間の休養明け。調教も足らずに、年末の有馬に出るなんて…と前評判は良くはなかった。単オッズを上げたのはやはりトウカイテイオーという銘柄だったろう。

トウカイテイオーの主騎手は岡部である。

俺にはこれからのビワハヤヒデがいるのに、終わったトウカイテイオーには乗るはずがないってとこだろう。岡部のこういう所も嫌いだった。逆にこれが田原なら初めからトウカイテイオーだろうね。テイオーは腐ってもテイオー。

でもトウカイテイオーが最終的に有馬記念に出馬を決めたと知って、俺はかなりビックリしたのを覚えている。大好きなタッグだけど、これは馬券勝負にならないのでは…絶対に取らなきゃならんかったんだよな。

俺が最終的にテイオーを切ったのはのは、やっぱり信頼性が薄かったから。勝つ時は強い勝ち方で負ける時はドン尻で劇場型だったから。

少しでも勝率を上げる馬券予想を努力し購入を目指していたからである。ま、結果伴ってないんだけども。

しかもガラスの脚をもつテイオー。

データベースを調べたり、調教タイムを分析し、馬体の様子を見ても、もうテイオーに復活は無いよね!と俺は周囲に言い切っていた。でも鞍上が田原というのがずっとモヤモヤしていた。

俺は田原のファンだったからね。田原なら、もしかしたら、、、奇跡を?起こしちゃう?なんて、一晩寝ずに考えたが、赤ペンで太線を引いて消した。頭の中からもその考えは抹消した。

もうね、頭の中は馬券収支で追い詰められていたとしか考えられない、毎レース異常な買い方をしていた。

有馬記念当日は朝一番で知立駅から中京競馬場に出向き、正面スタンド席でファイナルに相応しい格好の場所を確保していた。

なんと阪神1Rから激烈的中!

単勝5番エイシンロンメルに一万円一点買い。

単勝で12.5倍ついたので、12万5千円の払い戻し。「おいおい!これ今日あるんちゃう?」なんて、とにかく有頂天でハイテンションになったのは今でも忘れられない。今思えばこれで電車に乗って帰宅すれば11万5千円勝ちだったんだわな。

でも、1Rから馬券を獲れるとは幸先が良すぎる!これ負ける気がしない、連勝、連勝、が……それ以降ツキは消えて、諭吉は溶けていく。手持ちの35万もあれよあれよとなくなっていった。

いよいよメインレースへ。有馬記念!絶対に自分の予想を信じた!もう背水の陣!

相手に選んだのはエルウェーウィン、鞍上は南井克巳。この年、93年南井はナリタブライアンとのコンビで3歳G1を圧勝している(馬券は獲った)。

あのイメージが強かったんだよなぁ。南井もうまいよね。

去年の3歳G1朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)では何とビワハヤヒデに勝っているのだ。

出走表のメンバーの中で唯一ビワハヤヒデに土を付けた馬の一頭。出走回数が少ないが4戦3勝。連対率は良いし一年経ったといえどもビワには勝ってる(この一年違い、一年休養明けがトウカイテイオーだった)。

メンバーをみる。

驚異の末脚ナリタタイシンはいないし、運の強いウイニングチケットはもうダービーで運を使い果たして駄目駄目。

本馬場入場の返し馬で見て分かる。

ベガ武豊もいたが、この頃牝馬はグランプリを勝てない時流だった。レガシーはジャパンカップで勝ったが、その疲れは拭いきれない。良くて3着複勝だろうと予想。

そしてテイオーはそこそこ人気なので直線で馬群に沈む。何しろペースはビワが握るので先行逃げ切り、追い込み差してくる馬は難しい。前残りを予想した。

返し馬見なかったんだよなぁ、、、後からVTR見たら、良かったわな、テイオー。

とにかくビワハヤヒデが勝つには間違いない、完全な軸馬で要は相手だ。そしてヒモ予想。

流してればテイオーを勝ってたかも知れない。この時点で50万やられてた俺は焦っていた。10万や20万の勝ちじゃ足らないのだ!という状況…

賭けに出た!

エルウェーウィンとビワハヤヒデの一点買い10万。

今、、、考えたら無謀で馬鹿でしかない。

最悪の予想であり破綻ギャンブラーのやることだった。

でも発走5分前まで揺れてしまう情けなさ。

もう一つの案は15万をビワから何頭かに流す。しかし全流しでも50万は回収不可能。

とにかく50万回収する事にこだわっていた。ほんと駄目だね金に目がくらむと。仮にこの買い方だったら、なんぼか手元に金が残っていたはずだった。

あとのメンバーはG1馬がビワハヤヒデ、ウイニングチケット、トウカイテイオー、レガシーワールド、メジロパーマー、ライスシャワー、エルウェーウィン、ベガがいた。

今のグランプリじゃ珍しくはないが、当時では豪華G1馬のオールキャスト。どの馬にも目が移る。

このメンバーだとメジロパーマー(大好きな馬。山田泰誠パーマーが好きなんだけど、この日は横山典)がペースを作り、一頭逃げだろう。パーマーはグランプリを2回制覇してる、大逃げでタフ、ステイヤーだったからね。運もあったけど、立派なグランプリホース。でももう7歳馬。ハイペースには、ならずにパーマーがマイペースで引っ張るだろう。

とにかくパドックでエルウェーウィンの顔と馬体に見惚れていた。エルウェーウィンが好きだったんだなぁ。なんでだべか?でもよかったのよ、馬体は。馬体重が+6と絞りきれていないのがマイナス。

雑念を払う!決めたんだ!俺はエルウェーウィンに決めたんだ!と。

有馬はミラクルが起きる!今日はミラクルが絶対に起きると信じていた!

大波乱だ!と、ね!

今考えたらだよ、甘甘、人生甘すぎだし、ゴミ予想。マジでね。とにかく配当のことしか頭に無くてね。怖いよ、競馬にすべて突っ込むと。

そしてライスシャワーが大好きな俺はもうひとつの馬券をライス単勝10万を賭けた。

トータル20万の勝負。あわわ。天皇賞・秋でライスにはこっ酷くやられたんだけど、ライスは大好きな馬だったから許した。なんて心情馬券買いやがって!

馬体重を見たけど、440がキレてない。ライスのベストは440をキレてマイナスでないと!パドックも良くない。返し馬も良くない。

俺としてはうーむ諦めの一手だった、だけどしつこいが有馬ミラクルはよく起きる!と信じていた。

起きるとすれば!大波乱なら”関東の刺客”とまで呼ばれたライスシャワー!ミホノブルボン、メジロマックイーン、大物食いのライス!

ライスシャワーの大復活で感動!!

そして次は次世代の強敵ビワハヤヒデをやっつける!ってシナリオも予想した。テイオーじゃなくライスの復活ね、でもライスの復活はもっと後に用意されていた。

テイオーのパドック、馬体重は+14。骨折1年明けのレース、これは無理でしょ。と脳内からは完全に削除された。


さぁ、運命のゲートは開いた。


第38回有馬記念 右芝2500m/天候晴/芝良

着順/枠番/馬番/馬名/性齢/斤量/騎手/タイム/着差/通過/上り/単勝/人気/馬体重/厩舎/馬主/賞金(万円)

1 3 4 トウカイテイオー 牡6 56田原成貴 2:30.9 8-8-4-4 35.0 9.4 4 474(+14)栗東 松元省一 内村正則 13,000

2 8 13 ビワハヤヒデ 牡4 55 岡部幸雄 2:31.0 1/2 4-3-2-2 35.3 3.0 1 482(+2) 栗東 浜田光正 ビワ 5,200

3 7 12 ナイスネイチャ 牡6 56 松永昌博 2:31.6 3.1/2 8-8-8-6 35.5 26.6 10 496(-4) 栗東 松永善晴 豊嶌正雄 3,300

4 5 8 マチカネタンホイザ 牡5 57 柴田善臣 2:31.6 アタマ 14-14-13-10 34.9 43.3 13 486(-4) 栗東 伊藤雄二 細川益男 2,000

5 6 9 レガシーワールド 騙5 57 河内洋 2:31.7 クビ 3-3-3-4 35.9 4.9 2 496(0) 栗東 森秀行 ホースタジマ 1,300

6 8 14 メジロパーマー 牡7 56 横山典弘 2:31.9 1.1/4 1-1-1-1 36.3 25.0 9 482(+2) 栗東 大久保正 メジロ牧場

7 2 2 セキテイリュウオー 牡5 57 田中勝春 2:32.1 1 12-12-11-9 35.7 14.7 7 466(+6) 美甫 藤原敏文 新元観光

8 4 6 ライスシャワー 牡5 57 的場均 2:32.1 クビ 5-6-9-8 35.9 10.9 5 446(+2) 美甫 飯塚好次 栗林英雄

9 3 3 ベガ 牝4 53 武豊 2:32.3 1.1/4 10-10-7-7 36.3 13.4 6 438(0) 栗東 松田博資 吉田和子

10 4 5 ウィッシュドリーム 牡5 57 藤田伸二 2:32.3 クビ 12-12-11-10 35.8 32.4 11 460(+2) 栗東 坪憲章 日本ダイナースクラブ

11 7 11 ウイニングチケット 牡4 55 柴田政人 2:32.6 2 5-5-4-3 36.7 5.4 3 462(+2) 栗東 伊藤雄二 太田美實

12 1 1 エルカーサリバー 牝5 55 蛯名正義 2:33.1 3 10-11-13-12 36.4 73.2 14 468(-2) 栗東 田中良平 クレアール

13 6 10 エルウェーウィン 牡4 55 南井克巳 2:34.7 10 5-6-10-14 38.4 22.0 8 442(+6) 栗東 坪憲章 雑古隆夫

14 5 7 ホワイトストーン 牡7 56 田面木博 2:34.8 クビ 2-2-4-12 39.0 39.1 12 460(+10) 美甫 高松邦男 安藤博


俺はスタンド席で宙に舞う馬券の中で、ただ一人ボー然と突っ立っていた。

友人に「大丈夫か?加藤はん?」と言われ、嫌な汗がドッと吹き出た。「もういこうや、加藤はん、しゃーないやろ?」「うん…」

もう手元には新千歳空港への帰りのチケットと現金1万円しかなかった。

49万の負け。

脳内に異常な物質が流れて、カイジみたいに体全体がぐにゃ、ぐにゃ、ぐにゃ……まるで脳内は桃源郷。

友人と無言で徒歩で駅へ向かい、友人と最後の別れをして、空港で北海道に帰った。

友人「加藤はん!頑張ろや!俺、加藤はんのこと忘れへんで!また会おな。」

俺「林、ありがとう。おまえも元気でな。色々お世話になったな、頑張るよ。いつか会えるといいな。」

かたい握手をして友人、林と別れた。彼は今も元気だろうか?俺は彼の事は一生わすれないだろう。

ちなみに林はトータル、勝ちました。

競馬は怖いですよ、みなさん。

パチンコなんて論外ですが、一か八かのギャンブルは辞めた方がいい。


俺の競馬狂奏録でした。

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