横山光輝三国志 諸葛亮 孔明 14
続き。
「陳倉攻め・中盤」
諸葛亮が動いた。魏軍では……。
曹真「なに 王双が敵将二人を斬り 一人に重症を負わせたと」
兵士「はい そればかりか孔明は陳倉を攻めあぐね、一部の兵を残して祁山にむかったようにございます」
曹真は高笑いをした。
曹真「孔明め、出陣第一歩からつまづくようではもう往年の力はないとみえる。戦の先は見えたぞ。今まで仲達にばかり名をなさしめたが今度はそうはいかぬ」
その夜、魏軍敷地内で怪しい者を捕える。
その者曰く、自分は間者ではないと。
曹真に会わせてもらうように懇願する。
「他言をはばかることにござりますれば、なにとぞ」と。
曹真「余が大都督曹真じゃ。何か一大事じゃと」
従者「はい、それがしめは姜維の腹心の者にございます」
従者「はい、実は姜維様からこの手紙を御大将に渡すように命じられました」
曹真「ふーん、罪将・姜維 百拝して大都督に申し上げ候……」
費燿「大都督 いかがなされました」
曹真「姜維がのう、代々魏の禄をはみながら蜀に降ったのは、孔明の詭計に落ちたため。しかし天水郡にある老母のことは忘れようとしても忘れられぬ。心はいつも魏にある。もし帰参が叶うならばそれ相応の手柄を立てたいと申してきている」
費燿「それ相応の手柄とは…」
曹真「蜀軍の食糧を焼き払うというのじゃ。まだ書いてあるぞ、もし途中で蜀軍に出くわしたら姜維が食糧に火を放つまで負けたふりをして逃げよと...そして火の手が上がったら総攻撃すれば孔明を捕らえることもできるであろうと。これは吉報じゃ、この冬に食糧を焼き払われたら何十万の蜀軍はたちまち飢えに苦しむ」
曹真「ハッハハ これでこの戦勝ったわ」
費燿「大都督 これは孔明の策略ではございませぬか」
曹真「わしはそうは思わぬ。姜維の母思いは有名じゃ」
費燿「しかし、孔明は名だたる策士にございますれば」
曹真「だが、これがもし本当だったらどうする。我らはみすみす勝利を見逃すことになるぞ」
費の「それはそうでございまするが...それでは大都督は本陣に留まりくださいませ。まずそれがしが兵を出して、姜維と出会ってみましょう。もし首尾よく参りますれば、全て大都督のお手柄 もしたくらみがあれば、それがしが引き受けまする」
曹真「ふむう。よし五万の兵を授ける」
費燿「はっ」
兵士「申し上げます 前方に蜀軍がいます」
費燿「大軍か」
兵士「いえ、たいした兵力ではございませぬ」
しかし蜀軍は大軍とみると一気に引いてみせた。
費燿「まったく一矢も報いず逃げくさったわ」
進軍する費燿の前にまたもや蜀軍が現れる。
しかし……またもや蜀軍は逃げる。
魏将「費燿様、大都督の申された通り 孔明にはもう昔の勢威がないのでは…」
日が沈むので費燿はここに陣を張り、兵士に食を取らす。
そう、そこにはあの男がいた。
孔明は早速動く。
費燿「おう、一押ししてから退却せよ」
兵士「退却でございまするか」
費燿「これは姜維と打ち合わせの行動じゃ。我らは退却して敵を引きつける。その間に姜維は蜀軍の食糧に火を放ち それから我が軍と姜維軍で蜀軍を挟み撃ちするのじゃ。蜀軍の後方で火の手が上がったら反撃だ」
費燿軍はある程度戦い、引く作戦をとる。
馬岱軍が費燿を追う。
費燿「まだ火の手は上がらんか」
兵士「まだ上がりません」
費燿「姜維め何をぐずぐずしている。よし、あと十里後退だ」
兵士「費燿様、火の手が上がりました」
費燿「おおっ、やっと動いたか。よし、退却はこれでおしまいだ。反撃だ!」
馬岱「おおっ、敵が反撃に移ったぞ!かかれ!」
兵士「馬岱様!後方で誰かが反乱を起こしたそうにございます」
(悪い顔してんな、馬岱w)
馬岱「すると後ろで上がった火の手はそのためか」
兵士「はい、反乱軍の放った火でございます」
馬岱「いかん、このままでは挟撃されるぞ!一大事が起こった!引けっ!引けっ!」
費燿「見よ、敵はあわてて逃げ出したぞ。さあ挟撃して孔明を捕らえよ!」
ワァァーー!!
兵士「費燿様、道がふさがれておりまする」
費燿「こ、これは…もしや...いかん!これは孔明の罠だ!引けっ!引けっ!」
兵士「また後退するんですか…いったいどうなってるんだ」
ジャーン!ジャーン!
費燿「急いで駆け抜けろ」
兵士「費燿様、こちらに道が...」
費燿「おっ!よし!入れ!」
費燿「うん?」
費燿「き、き、きさまは姜維!よくも謀ったな!その首わしがはねてくれん」
姜維「そちの腕ではまだまだ私の首はとれぬ」
姜維「それっ!」
費燿「うっ!」
姜維「さあ、いさぎよく降伏せよ」
費燿「黙れ、誰が降伏などするものか、いずれその首はもらうわ!」
費燿「もとの道へ引き返せ」
費燿「しまった 退路もふさがれた」
馬岱「もはや退路も断たれた。悪あがきはやめて降伏せよ」
費燿「黙れ!降伏などせぬ!一隊は道をふさぐ岩を片付けよ!残りは矢で応じるのだ」
馬岱「それっ!」
兵士「うわあ」
費燿「も もはやこれまでか」
兵士「ああっ 費燿様」
兵士「費燿様」
馬岱「お前達は最後までよく戦った。指揮官が死んだ今、ここで降伏しても恥ではあるまい。降伏する者は縄につかまれ」
蜀陣では……
姜維「右将軍 申し訳ございませぬ。この度の計は曹真を捕えるために私が考え出した大がかりな計。しかし曹真を討てなかったことで、この計が成功したとはいえませぬ」
孔明「そうだな 惜しむらくは大計を用いすぎた。よく覚えておくがよい、大計を用いるを悪いとは言わぬが、少し用いて大なる戦果を上げることが策略の妙味なのじゃ」
姜維「はい これからは心いたします」
*今回の戦いでは、孔明は姜維に諮って(相談する、多くの意見を集める)、祁山へと方向転換をはかった。曹真が得た猛将王双が手柄を立てて大喜びの曹真は、これによって心に隙が生じたか、姜維の偽りの投降にあざむかれて誘い出される。しかし、これは大将の費燿が身代わりに出たため、曹真は助かった。
作戦後、姜維は孔明にたしなめられるが陳倉の攻撃によって孔明は完敗していたのだ。
そこに姜維の助言があり、曹真を討てずとも大将 費燿の死と魏軍三万の被害を負わせた。
大計を用いすぎたとはいえ、姜維の作戦は蜀軍の一進一退をさらに前へ進めたと言える。
魏ではその時、曹真の先鋒隊が潰滅したことは、風の速さで洛陽に伝わっていた……。
続く...。
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